hiyamizu's blog

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東野圭吾『新参者』を読む

2017年07月27日 | 読書2

 

東野圭吾著『新参者』(講談社文庫2013年8月9日講談社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

日本橋の片隅で一人の女性が絞殺された。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎の前にたちはだかるのは、人情という名の謎。手がかりをくれるのは江戸情緒残る街に暮らす普通の人びと。「事件で傷ついた人がいるなら、救い出すのも私の仕事です」。大切な人を守るために生まれた謎が、犯人へと繋がっていく。

加賀恭一郎シリーズ第8作目。2010年4月~6月、「日曜劇場」で阿部寛主演でTVドラマ化。

 

日本橋小伝馬町で一人暮らしの45歳の三井峯子が絞殺された。日本橋署に代わったばかりの加賀は町を歩き回りながら事件の周辺の聞き取りを進める。

人形町の煎餅屋「あまから」では、アリバイに疑問がある出入りの保険の外交員に嫌疑がかかる。

料亭「まつ矢」では、殺人現場に残っていた人形焼きを買った見習いの修平は、問い詰められても主人をかばう。

瀬戸物屋「柳沢商店」では、店主の鈴江と嫁の麻紀のいさかいが激しい。被害者峯子が買ったキッチンバサミが実は・・・だったことが判明する。

「寺田時計店」では、頑固オヤジの玄一が、犬の散歩の途中で寄っていたのは実は・・・。

洋菓子店「クアトロ」の店員美雪に、なぜか峯子はやさしい。

峯子の親友多美子は、英国に移るため峯子の翻訳の援助はできないと告げた直後に殺されたことに悩む。

 

  

「新参者」のWikipediaにはこうある。

「煎餅屋の娘」で用いられたトリックは東野が自身の母親に対して行ったものであり、その母親が2004年6月3日に死去し、小説を読まれたら母親にばれるという理由から今まで使われなかったトリックを取り入れ、母親の死後の四十九日頃に「煎餅屋の娘」を発表したという経緯がある。その他、「時計屋の犬」の舞台となる時計屋は、東野の実家の時計屋に基づいて描かれている。

 

「嫁と姑の問題だけは、亭主の力ではどうにもならん。・・・おまえに出来ることは、それぞれの言い分を聞くことだ。・・・絶対に反論するなよ・・・。聞き終えたら、・・・、折を見て自分から伝えておくと答えるんだ。で、大事なことだが、もちろん本当に伝えたりしてはいけない。いずれ、一体どうなってるんだと責められるだろうが、そこは耐えろ。連中の怒りの矛先を、おまえに向けさせること。それだけが、おまえに出来る解決策だ」

 

事件に直接関係しないことまで調べてくれた加賀に、心に響く秘密を明かしてもらった多美子が聞く。

「加賀さん、事件の捜査をしていたんじゃなかったんですか」

「捜査もしていますよ、もちろん。でも、刑事の仕事はそれだけじゃない。事件によって心が傷つけられた人がいるなら、その人だって被害者だ。そういう被害者を救う手だてを探しだすのも、刑事の役目です」

 

最後はこう終わる。

「加賀さん、あんた、一体何者なんだ?」

すると加賀は傍らに置いてあった扇子を広げ、顔を扇ぎながら答えた。

「何者でもありません。この町では、ただの新参者です」

 

初出:「小説現代」2008年8月号から5年間、9作品発表。2009年9月講談社より単行本として刊行

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

 新参者で冷静な加賀の温かい思いやりが、人情味ある下町の人びとの中に溶け込み、良い味を出している。著者が実際に人形町周辺を歩き回って一話づつ書き込んだということで、下町風景がよく書き込まれている。

 

 謎解きは、グルグル回りまわって、結局最後は・・・と言うことで、意外性というより、ほっぽり出された感じがした。

 

 彼が事件に直接関係ない周辺人物の小さな謎を解いていくうち徐々に本来の事件解決が浮かび上がっていく構成となっている。被害者の周りをグルグル回りながら、どんどん関係者が増えていく。以下のように登場人物をパソコンに打ち込みながら読んだが、40名になった。年寄りにはキツク、以前の章に登場人物が出てくると大変だ。

 

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト

 

 

登場人物

上川菜穂:煎餅屋『あまから』の娘。美容学校へ通う。

上川聡子:菜穂の祖母

上川文孝:煎餅屋『あまから』の主人。菜穂の父

 

田倉慎一:新都生命の外交員

 

加賀恭一郎:日本橋署の刑事(警部補)。剣道の元日本チャンピオン。かって警視庁捜査一課にいた。

上杉博史:警視庁捜査一課の定年まじかの刑事

 

三井峯子:絞殺被害者。清瀬直弘と離婚し一人暮らし。45歳。息子清瀬弘毅とは連絡していない。

 

修平:人形町の料亭『まつ矢』の板前見習い。17歳。

頼子:『まつ矢』の女将

泰治:『まつ矢』の主人

 

柳沢尚哉:大手ゼネコンのサービスマン。瀬戸物屋『柳沢商店』

麻紀:尚哉の妻。瀬戸物屋『柳沢商店』。かって、キャパクラで働いていた。

鈴江:尚哉の母。瀬戸物屋『柳沢商店』

 

寺田玄一:小舟町の『寺田時計店』の主人

寺田志摩子:玄一の妻

寺田香苗:玄一の娘。高校の卒業式直後に駆け落ち結婚。

米岡彰文:『寺田時計店』の職人

沢村秀幸:香苗と結婚。

沢村誠造:秀幸の父

 

中西礼子:菓子店『クアトロ』の主人

美雪:菓子店の店員。彼氏は健一。

 

清瀬弘毅:小さな劇団の団員。三井峯子の息子。両親の離婚前に大学を辞めて家を飛び出した。

清瀬直弘:弘毅の父。三井峯子の元夫。清掃会社を経営。

宮本祐理:直弘の秘書。長身で美人。

青山亜美:弘毅の同棲者。専門学校生。堀留町の喫茶店『黒茶屋』でバイト。

篠塚:弘毅の劇団の主宰者

山田郁夫:劇団員

 

岸田要作:清瀬直弘の大学の1年後輩で、創業時から27年間会社の税理を任される

岸田克哉:要作の息子。建築コンサルタント会社勤務。29歳。

岸田玲子:克哉の妻。29歳。

岸田翔太:克哉の5歳の息子

 

佐川徹:木製玩具屋の店主

 

戸紀子:20代の直弘と関係のあったカラオケスナックのママ。

 

藤原真智子:三井峯子の大学時代の友人。シアトル在住。

吉岡多美子:三井峯子の大学時代からの友人で、翻訳者に育てるつもりだった。死体発見者・通報者。

コウジ・タチバナ:映像クリエーター。三井峯子にプロポーズ。英国籍を取得した元日本人。

高町静子:三井峯子が清瀬直広との協議離婚手続きを依頼した弁護士

 

藤山雅代:手作り工芸『ほうづき屋』の店主

菅原美咲:『ほうづき屋』の店員。

 

 

 

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