hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

中野孝次『犬のいる暮らし』を読む

2012年06月20日 | 読書2

中野孝次著『犬のいる暮らし』1999年3月岩波書店発行、を読んだ。(文春文庫化されている)

宣伝にはこうある。
尻尾を振りに振って、犬が全身でぶつかってくる。人もまた誰はばかることなく思う存分愛情をふり注いでやる。これこそ生を実感する時ではないか。人間は何かに愛を注がずには生きていけない生きものなのだ。―ハラスを失って5年、ふたたび犬とともに生きる喜びを得た著者が、人間と犬とのかけがえのない絆を語り尽くす。


著者は新興団地で一軒家を持ち、47歳で初めて犬を飼った。この柴犬ハラスの生涯を書いた本が『ハラスのいた日々』だ(この本は五つ★)。

出版後大勢の読者から愛犬への思いを綴った手紙をもらった。やがて、歪んだ形のペットブームがやって来た。そして、2代目、3代目の犬を飼い、犬飼仲間と話し、犬の本を読み、現代人とくに老人にとっての犬について考える所があり、まとめたのがこの本だ。

大体日本での犬の飼われ方は、ある犬種が流行しだすと猫も杓子もそればかり飼うという傾向が露骨で、・・・
一言でいって「可愛らしい」という犬種が好まれる傾向がある。・・・ひたすら「かわいい」が最高の価値規準をなしている時代は、非常に未成熟な、積極性と主体性を欠いた時代ではないか、と思っている。

犬に対しては人は無限の愛情を注ぐことができる。無条件に、無警戒に、ただ愛することができる。

犬に死なれて一番深刻な体験をするのは、最初に飼った犬に死なれたときなのである。・・・
犬がいない生活が5年続き、海外旅行には行くようになったが、散歩しないので脚の筋肉が衰え、夫婦の会話ななくなった。・・・
前の犬の供養のためにもすぐまた飼うように、とすすめてくれた人がいた。・・・
そしてまた、犬中心の生活に戻った。


中野孝次(なかの・こうじ)
1925年~2004年。千葉県生まれ。作家。
1950年東京大学文学部卒
1964年國學院大學教授
1976年日本エッセイスト・クラブ賞『ブリューゲルへの旅』
1979年平林たい子賞『麦熟るる日々に』
1988年『ハラスのいた日々』新田次郎文学賞
『清貧の思想』など。


私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

この本を読む前に、『ハラスのいた日々』(文春文庫)は犬好きなら絶対読むべきだし、そうでもない人なら是非読んで欲しい。猫より犬派だが、犬を飼ったことがなく、犬の毛アレルギーがある私だが、犬の単純なひたむきさ、それに応え心から犬を愛する飼い主に感動する。

私は、子供の頃、狂犬病の犬に噛まれワクチンが間に合わないと間違いなく死ぬと散々脅かされたせいで、今でも犬を見ると、痩せこけて、口を開けてハアハアとよだれを流し近づいてくる狂犬がイメージされて、実は少々犬が恐い。今でも犬が来ると、道の反対側を歩く。そんな私でも感動するのが、『ハラスのいた日々』だ。


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