hiyamizu's blog

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高野和明『ジェノサイド』を読む

2012年06月04日 | 読書2
高野和明著『ジェノサイド』2011年3月角川書店発行、を読んだ。

急死したウイルス学者の父親からの1通のメールが届き、創薬化学専攻の大学院生・古賀研人は隠されていた私設実験室に辿り着く。父は何を研究していたのか。

同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、イエーガーは、難病の息子の治療費を稼ぐため、暗殺任務とおぼしき極秘作戦につく。「人類全体に奉仕する仕事」と言われたのだが。チームは戦争状態のコンゴのジャングル地帯に潜入する。
東京の大学院生と、アフリカで戦い続ける傭兵の人生が交錯する時、米国のネオコン強圧政権は、この事件を人類絶滅の危機と捉え、力で押しつぶそうとする。

2012年本屋大賞第2位、このミステリーがすごい!2012年飯1位など
初出:「野性時代」2010年4月号~2011年4月号

高野和明(たかの・かずあき)
1964年生まれ。
岡本喜八に弟子入りし、大学中退。
1989年渡米、1991年帰国後、TV、映画の脚本家。
2001年『13階段』で江戸川乱歩賞受賞、40万部
2011年本書で直木賞候補、山田風太郎賞受賞、日本推理作家協会賞受賞



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

話は良くできていて、確かに面白く、一気に読める。特殊戦闘員が敵地に潜入するようなハリウッド映画が好きな人にはとくにお勧めだ。

アメリカ大統領バーンズがブッシュそっくりの硬直人間で、また取り巻きすべてが善悪より「何が大統領の気に入るか」だけを考えて行動するところなど現実味があって笑える。

薬作りの過程の詳細がながながと書かれる。謝辞に10名ほどの医学者の名前があり、著者勉強ぶりがしのばれるが、小説としてはバランスを欠いている。

過去の日本の韓国、中国への暴虐行為が本筋にあまり関係なくところどころ出てくる。こだわる人はいるだろうが、量的には多くなく、読み飛ばせば良いだけだ。こんな大作を書いたのだから、これくらいのことは著者に好きにさせてやりたい。と、戦後の平和教育に毒された私は思う。




以下、本筋に無関係な私のメモ

研人が正勲に言う。
「先に謝っておくけど、かなり厄介なことになりそうだ」「最悪の場合、正勲が警察に捕まるか、日本にいられなくなるかも知れない」・・・
「最良の場合は?」
「全世界で、十万人の子供の命を救える」
「分かった」

「第二次大戦中、近距離で敵兵と遭遇したアメリカ軍兵士が、どれくらいの割合で銃の引き金を引いたと思うかね?」・・・「・・・たったの二割だ」・・・「残りの八割は、弾薬補給などの口実を見つけて殺人行為を忌避していたんだ。・・・最前線の兵士たちは、自分が殺される恐怖よりも、敵を殺すストレスのほうを強く感じていたのさ」

そこで軍部は射撃訓練の的を丸型標的から人型標的に変え、・・・射撃の成績に賞罰を加えるようにした。これらの結果、べトナム戦争での発砲率は95%になった。しかし、帰還兵の中にPSTD患者が多くなった。(人を殺してもまったく精神的打撃を受けない理想的兵士は2%いる)。

脳の形が変われば精神や思考も変化するからね。現に我々は、脳梁の太さが違う相手に振り回され、屈服を余儀なくされている。

すべての生物種の中で、人間だけが同種間の大量殺戮を行う唯一の動物だからだ。それがヒトという生き物の定義だよ。人間性とは残虐性なのさ。


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