hiyamizu's blog

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紀田順一郎「にっぽん 奇行・奇才逸話事典」を読む

2010年08月21日 | 読書2

紀田順一郎編「にっぽん 奇行・奇才逸話事典」1992年6月、東京堂出版発行、を読んだ。

明治から昭和にかけての作家を中心とする有名人77名(多分)の逸話を集めている。一人当たり3,4ページで、5、6のエピソードを紹介する。だから、その人のある面、とくに変わった点だけに注目したちょっとした話が多く、人となりの全体的描写にはなっていない。しかし、こだわりや癖の強い人が多いので、トンデモ話が多く、面白く読める。

いくつか、あげる。

稲垣足穂はゲイだった。
ある文学賞の選考会で、彼はキッスの達人だと威張りだし、隣に座っていた椎名麟三をつかまえて、しみじみと10秒ほど“接触”した。見ていたものは,ハゲ頭が2つもくっついているのを見て、フランスパンを連想した。


古今亭志ん朝
関東大震災の折、グラッときたとたん、彼は「東京中の酒が地下に吸い込まれる!」と思い、あわてて酒屋へとびこんだ。酒屋のほうは逃げ支度に懸命で「いくらでも持ってってくれ!」という。そこで、ちゃっかり2升も飲み、ついでに両手に1本ずつぶらさげて外に出ると、地面は揺れているわ、酔いはまわるわで、もうフラフラ。このときばかりは、ふだんおとなしい女房にどなりつけられた。


永井荷風
荷風は二度ばかり焼け出され、そのたびに丸裸になったのにこりて、晩年はフロに入るにも(行くにも)全財産を入れた鞄から、コウモリ傘や靴までかかえていた。

(私もこの話は子供の頃聞いていて、へんなオジサンだなと思っていた)

中江兆民
親友が死んだとき、兆民はさっそく黒水引と白紙一枚をふところにして、友人の家に駆けつけ、未亡人にあいさつしたあと、「いま急に金が必要なのだが、2円ばかり貸してくださらんか」と頼んだ。未亡人は、こんなときにと腹を立てたが、やむなく貸してやった。すると兆民は別間にひっこんで、例の水引にその2円を包み、再び霊前へ戻ると「これはほんのおしるしで」と差しだした。




紀田順一郎は、1935年横浜市生れ。慶応大学経済学部卒。商社を退職後、近代史を中心とする評論活動、怪奇小説翻訳などを行う。
『東京の下層社会』『日本の書物』『古本屋探偵登場』など



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

著者あとがきにはこうある。
人となりを手っ取り早く知るのは、エピソードを知るに越したことはない。すぐれた人物は、印象深い逸話の持ち主であることが多い。


人となりは奇行というエピソードでは知ることはできない、その人のある面がわかるだけである。しかし、意外な面が見えて3次元的にその人を知るための手段の一つではあろう。

寝転んで、あきれながら面白く読む本だ。



コメント
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