hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

葉室麟「柚子の花咲く」を読む

2010年08月12日 | 読書2
葉室麟著「柚子の花咲く」2010年6月、朝日新聞出版発行、を読んだ。

瀬戸内の日坂藩、鵜ノ島藩の干拓地を巡る境界争いに絡んで武士、町人、農民が一緒に勉強する郷学の教師である梶与五郎が殺される。梶は酌婦を連れて遊び歩きやくざ者と揉め事を起こして殺されたという噂になっていた。恩師の名誉を挽回し、この謎を解くために、少年時代に梶の薫陶を受けた筒井恭平、穴見孫六が危険を犯し鵜ノ島藩に潜入する。

殺された梶は、「戦場においては相手など選べぬのだぞ」と武士の子も百姓の子にも関係なく相撲を取らせ、遊ばせ、愛情あふれ、親しめる教師だった。梶は、けして成績が良くなかった恭平を「身を捨てて仁をなす奴」と評価し、「桃栗三年、柿八年、柚子は九年で花が咲く」と言っていた。

師の名誉回復と、悪への戦いに武士と農民の違いを超えて、昔の郷学仲間が協力し、幼い時からの愛が花咲く。



葉室麟(はむろ・りん)は、1951年生まれ。作家。『銀漢の賦』『いのちなりけり』『秋月記』など。
西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業。
地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て50歳から創作活動に入り4年で文壇デビュー。
2005年「乾山晩愁」で歴史文学賞受賞
2007年「銀漢の賦」で松本清張賞受賞
2009年「いのちなりけり」で直木賞候補。「秋月記」で山本周五郎賞および直木賞候補。
2010年「花や散るらん」で直木賞候補。

本書は「小説トリッパー」2009年秋季号~2010年春季号の連載に加筆訂正したものだ。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

殺された梶に荒れていた過去があるとの噂、埋立地をめぐる陰謀などミステリー仕立てで、正義感の強い若手下級武士の活躍が面白く一気に読んだ。
ただ、ひねりがなく、登場人物はみな一様に“良い人”で、書き方も真っ正直、ストレートで余韻がない。
物語の舞台も展開も藤沢周平ものを思わせる正攻法の歴史小説だ。



コメント
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