hiyamizu's blog

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ユニバーサル・サービスのため毎月7円支払うようになったことをご存知ですか

2007年03月19日 | 雑学
ユニバーサル・サービスのため毎月7円支払うようになったことをご存知ですか

ユニバーサル・サービスとは、全国どこにいても合理的料金で公平に提供される普遍的サービスのことです。
このため今年から皆さんの固定電話、携帯電話、IP電話のそれぞれの電話番号毎に7円(税込7.35円)が徴収されています。
2007年1月からスタートしたのは、NTT東日本や西日本が提供する(1)加入電話サービス、(2)公衆電話サービス、(3)110番、119番(緊急通報)です。これらのサービスを維持するためにNTT東西を含む約50社の電話会社全体でユニバーサル基金として集め、NTTの赤字を補填します。

ユニバーサル・サービスはこれまでNTT東西の負担で維持されてきました。しかし、固定電話サービスの収益悪化にともない、とくに山間地など採算がとれない地域でユニバーサル・サービスの提供が難しくなってきました。また、公衆電話利用はピーク時の1/10になっています。このため、多数の電話会社全体で赤字補填することになりましたが、結局のところはほとんどの場合、利用者が負担することになります。

NTTのユニバーサル・サービスの赤字分を計算すると、H17年度は518億円です。NTT東西への基金からの補てん額は赤字518億円からNTT東西の負担額366億円を引き、152億円となります。この金額を各電話会社が自分のもつ電話番号数に比例して基金に支払います。

この152億円に、徴収のための社団法人の費用1億2354万円が加えられて、その合計額を全国の固定電話、携帯電話、IP電話全電話番号数(1億7921万番号)で割ると、7円になります。
利用者からユニバーサルサービス料として徴収したお金を、NTT東西は52億円、他の各社が合計100億円、基金へ拠出します。結局、赤字518億円の約80%、412億円を自分で補うことになるという変な制度です。

今年の1月か、2月から皆さんの固定電話、携帯電話、IP電話のそれぞれの番号毎に7円(税込7.35円)が徴収されています。我が家では、固定1、携帯2、IP1と毎月4*7.35円=29.4円の値上げになりました。

仕組みの大筋は理解できるものですが、社団法人の費用1億2354万円は多すぎますし、コストが非常にかかる遠隔地などの料金は、全国平均より多少高くしても良いのではないでしょうか。今後ますます赤字が増大していき、ブロードバンド・サービスも対象とするなどの話もあることを考えると、料金算定方法を見直すことが必要と思います。
また、コスト算定に実際の設備でなく、最も効率の良い設備を使用したとする仮定上のコストを用いているのも、多重化できない加入者線には技術革新が適用できにくいことを考えると、NTTにとっては厳しい算定方法となります。

以下、詳細な話で、興味ある人だけごらんください。

1. ユニバーサル・サービスの範囲
 現在のところ固定電話が対象で、携帯電話やブロードバンドは対象外となっています。具体的には、加入者の基本料(家庭から電話局までの加入者アクセス回線で、そこから先の市内通信は対象外)、第一種公衆電話(利用は非常に少ないが公共性の観点から設置している公衆電話で、東58千台、西50千台)の市内通信、緊急通報と、離島特例通信(離島で距離によらず特別に安くしている通信)が対象です。

2. 基金の対象エリア
 NTT東西の7,160の電話局別のコストを分析し(平均2,421円/月・加入)、2シグマ(標準偏差)以上のコストがかかっているエリア(局)を高コストエリア(平均6,222円/月・加入)とします。このエリアの加入者数は全体の4.9%に過ぎませんが、7,160の局のうち3,070局が高コストエリアになっています。要するに、表現は不適切ですが、約5%のもうからないお客のために、約43%の局が必要となっていることになります。

3. 補填額の算定方式
 高コストエリアでの「全国平均費用を越える額」を補填額とします。ただし、コスト計算には長期増分(ぞうぶん)方式で算定しますので、実際の費用より約13%低い額になります。
長期増分方式とは、実際の設備によるコストでなく、最新の設備であったらと仮定してコストを計算する方式で、補填を受ける事業者が設備を古いままにすると損をするようにするための計算方法です。実際は加入者線や公衆電話は利用効率が低いため、最新の技術を用いた設備に取り替えることは考えにくいのですが。

4. 実際の基金規模
 H17年度はNTT東西を合わせて赤字は518億円で、補てん額は赤字518億円からNTT東西の負担額366億円を引き、152億円となります。
補てん額は、来年度200-300億円、再来年度300-400億円と増加する見込みです。米国では20年ほど前からこの制度が実施されていて、福祉サービスなども含めるので6,000億円規模となっています。
実際には、よく見ると、この152億円に、支援機関の支援業務に係わる費用として1億2354万円が加えられていて、右から左にお金を動かすだけで、目立たないところで(社)電気通信事業者協会が1億円以上かすめとっています。
http://www.tca.or.jp/universalservice/number/number-price.pdf

5. 基金拠出事業者
NTT東西と接続している売上高が10億円を超える電気通信事業者で、NTT東西も含みます。必要な全体金額を各事業者のもつ電話番号の合計数で割ると、番号ごとに7円(税込7.35円)となります。NTT東西は52億円、他の各社が合計100億円を基金へ拠出します。膨大なコスト計算や、中小事業者からの徴収事務費をかけて、結局、赤字518億円の約80%、412億円をNTTは自分で補うことになるという建前だけ実現したということになってしまっています。

6. 実際の負担金調達方法
負担金を拠出する事業者がその金額を経営努力によって内部吸収するか、あるいは利用者に転化するかについては、事業者に任されています。実際はケーブルTV会社など小規模事業者を除く、多くの事業者が利用者に転化していて、ほとんどすべての電話番号ごとに7.35円/月値上げになりました。利用者転化も、明細書に明示されるので、ユニバーサル・サービスと言うものを利用者に意識させるためには良いことなのでしょう。

7. 基金支払い方法
 各電気通信事業者が、その使用している電話番号の数に比例した額を、(社)電気通信事業者協会を通じて、NTT東日本・西日本に支払います。NTT東西は自分で支払う金額を除いて、受取る形になります。

8.ユニバーサル・サービスの収支
加入電話の基本料は、NTT東日本で▲262億円、NTT西日本で▲196億円の赤字
第一種公衆電話(市内通信など)は、NTT東日本で▲27億円、NTT西日本で▲19億円の赤字
緊急通報は、NTT東日本で▲5億円、NTT西日本で▲9億円の赤字
合計で、NTT東日本で▲294億円、NTT西日本で▲224億円の赤字で合計▲518億円
基金からの補てん額は、赤字518億円からNTT東西の支払額366億円を引き、152億円となります。受取りはNTT東西ともには76億円です。

NTT東日本 http://www.ntt-east.co.jp/aboutus/univ.html
林紘一郎他「進化するネットワーキング」NTT出版


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