ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

茶の湯の心

2012-06-19 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
待侘(まちわび)庵の、小さい戸口を開いて中に入り、茶室に案内した。
茶室に入ると、
松殿「香…?」
池田「タニ(インドネシア産)の伽羅(良質の香木)です」
松殿「蘭奢待(らんじゃたい)か?」平安時代に流れ着いた香木で、
1575年、織田信長は相国寺の茶会でこの香木を切り取り、焚きました。
池田「それに、近い香りかと存じます」
静かに香る香木が、雅びやで清楚な趣を醸し出す。
目を閉じれば、異国の寺院を想起させるような薫香で、
松殿「はて、どこかで利いた香りだな。池田…」
池田「よく薬に入れますので、」
生薬に混ぜて精神安定、鎮静剤を作る。香りで覚醒を引き起こし、
松殿「判断力を鈍らせようというのか?」
池田「いえ、そのような…」
義経「難しい判断を下すような話じゃないさ。座ってくれ」
和田「これで、二畳か…思えんな」
土壁を用い、柱を丸くし、視覚効果を利用して空間の圧迫感を緩和した。
武家屋敷の一角に、鄙(ひな)びた空間を作り、
「ここだけ異空間…」娑婆の喧騒から抜け出したような異次元。
すぅ…と香を利いて、天井を見上げた。
二畳という狭い間取りに凛とした佇まい。自然と調和した空間が心の平安をもたらす。
冷静な判断を促すと言うより、茶の花香より気の花香で条件を呑ませると言った所か。
「何を呑まそうとしてるのか…」
ふぅ…と大きく溜息を付き、香に嫌気を混じらせた。
武家の茶の湯(武家茶道)とは選ばれし者のみ許された道で、茶器にも大きな価値があり、茶器をめぐる戦も度々起きるほどで国よりも大事とされた。
それ故に、茶会とは条件を呑むか呑まれるかの賭けでもあり、最大の心理戦略と言われた。
狭い空間内で提示された条件に、主賓(最高位の客)は茶と共に呑むしか無い。しかし、
悪い気に決してならないと言う。
さて、どんな条件を突き付けて来るか…。