ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

目玉商品

2012-06-05 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
あやめ「支店のため…だけですか?」
山長さん「支店…の…うぇ…え…ん」大泣きして「どうするんだよぉ…」おいおい泣いて、
あやめ「…」泣き方が、女優 高畑淳子さんみたい…。
何と無く分かっていた。
「私の代わりなんて、たくさんいる。ここで働きたいっていう人だって、たくさんいる」
私じゃなくても良いっていう人はたくさんいるし、私の代わりは、いくらでも…
山長さん「教えるの面倒なんだよ。一から教えて、覚えたと思ったら辞めちゃってさぁ…」
あやめ「なぜ、辞めていくのでしょう?なぜ、続かないのでしょう?」
山長さん「根性がないだけだろぉ、そんなの…」
あやめ「いいえ、必要性の問題です。必要だと思えば、女将さんのように、ずっとここを守ります。お店の味、ずっと、求められますよね。常連のお客様に…」
山長さん「常連さん…」
あやめ「ほら、ここに」おでこを差して「たくさんのお客さんの顔が浮かんだ」
山長さん「あやちゃん…うぇ…ん」
あやめ「私…お客様の顔、思い出せなかった…」
“菖蒲団子不振症”
「今日、お客様にお出ししたあやめ団子…残っていました。悲しかった。残ったお団子が可哀そうだと思えて、残したお客様のお顔を覚えていなかった。どんな表情でお菓子を見つめていたのか…私、お客様の心、何も見ていなかったんです」
山長さん「…」
あやめ「業務をこなすだけで…お客様の事、何も考えてなかった」
山長さん「…今頃、気付いて…バカかい?くっらぁ~い顔して、笑顔で接客も出来ない。お菓子のアクセントは笑顔だって言ってのに…、辞めてもらって清々だよ。ほんとなら、クビだよ、クビ…クビだよッ」バンッ、手をついて立ち上がって、裏の厨房に行ってしまった。
あやめ「お…女将さん…」
厨房から戻って来た、山長さん「退職金でないからね…代わりにこれ、持って…うッうぅ…」
あやめ「これ、新商品…」
山長さん「あやちゃんが火傷した時、閃いた…」
麩を作る要領で、棒に澱粉を巻き付けて、くるくる薪で焼き上げる、
あやめ「年輪菓子(バームクーヘン)…支店の目玉商品になりますね」