福島沖の地震 日ごろから備えてこそ
2021年2月16日 中日新聞
福島県沖で十三日深夜発生した地震は、十年前の東日本大震災の余震とみられる。地球的スケールでは十年は一瞬にすぎない。地震列島に生きていることを心に留め、常に備えを固めておきたい。
ガタガタとした縦揺れに始まりグラグラと大きく長い揺れが続いた。その範囲は北海道から中国地方に広がり、特に東北や関東に住む人は東日本大震災を思い出したことだろう。ただしマグニチュード(M)は7・3。地震のエネルギーはM9・0だった大震災の数百分の一にとどまる。
政府の地震調査委員会によると短期的には、今後一週間程度は震度6強程度の揺れに警戒する必要がある。長期的には今後十年くらいは同程度の余震が起こりうる、という。
今回、一部地域で震度6強を記録し、崖崩れや落石が随所で起きたにもかかわらず、人命の被害はなかった。大震災後、家屋や土木構造物の耐震化が進んでいたことが被害の拡大を防いだのだろう。震源が地下五五キロと深く、被害を出すほどの津波が起きなかったことも幸いした。
不十分だった点も明らかになった。東北新幹線では未補強の電柱が倒れたり、高架橋が損傷したりして、長期間の運休を余儀なくされている。補強の遅れや見落としがないか、再点検が必要だ。
建築、土木の分野で耐震化が進んだ半面、地震学には画期的な進歩が見られない。観測網は充実してきたものの、時と場所を特定した地震予知の実現にはほど遠い。
研究者たちは「いつ、どこに来るか分からない」という言い方に傾いている。およそ百年から百五十年おきに起きるといわれていた南海トラフ地震も、発生間隔をより幅広くとらえる考え方が有力になっている。明日かもしれないし二百年後かもしれない。直下型地震になると、さらに分からない。
現状では、地震予知を当てにすることはできない。耐震補強を地道に進め、日ごろから防災対策や避難準備をしておくことが命を守る最善策である。
十年前と異なるのは、スマートフォンと会員制交流サイト(SNS)の急速な普及だ。被災地の安否や防災情報の確認には有用だが、あふれる情報にはデマや有害なもの、例えば外国人差別的な内容や地震雲、人工地震説など疑似科学的なものまで、さまざま含まれる。
命を守るためには、誤った情報をうのみにしたり、拡散することがあってはならない。