案里議員辞職 政権の関与も究明せよ (2021年2月4日 中日新聞)

2021-02-04 10:09:53 | 桜ヶ丘9条の会

案里議員辞職 政権の関与も究明せよ

2021年2月4日 中日新聞
 河井案里参院議員(47)が辞職した。二〇一九年参院選での選挙違反で有罪判決を受けたためだが、河井議員に巨費を投じた自民党本部や政権中枢は選挙違反に無関係といえるのか。徹底究明が必要だ。
 河井議員は参院広島選挙区で自民党公認で初当選したが、公職選挙法違反(買収)容疑で昨年六月、夫の克行被告とともに逮捕され、自民党を離党していた。今年一月、東京地裁で懲役一年四月、執行猶予五年の有罪判決を受け、四日の期限前に控訴を断念した。
 失職が決まる前に、自ら議員辞職の道を選んだのだろう。遅きに失したとはいえ当然である。
 ただ、案里議員の議員辞職をもって、今回の選挙違反事件の幕を引くわけにはいかない。
 案里議員自身や選挙運動を主導したとされる克行被告は国会で説明責任を果たしておらず、案里議員の当選に尽力した自民党本部や政権中枢が選挙にどう関わったのか、明らかにされていないからだ。
 改選数二の参院広島選挙区は自民党と旧民主党系が議席を分け合い、当初、現職の溝手顕正元国家公安委員長を公認していた自民党は、党本部主導で案里議員を二人目の候補として擁立した。
 党本部の案里議員への肩入れは表向き二議席独占が狙いだが、当時首相だった安倍晋三氏に批判的な溝手氏の追い落としが真の目的ではなかったか。安倍氏に加え、当時官房長官だった菅義偉首相も案里議員の応援に入っており、肩入れは政権中枢の意向でもあろう。
 案里陣営には党本部から、他の候補の十倍に当たる一億五千万円が渡った。案里議員は「違法性はない」としたが、こうした資金が地元議員らの買収に使われた可能性はないのか。疑いは晴れない。
 選挙違反事件の背景に、政敵を強引に退ける安倍前政権中枢の手法や、自民党本部からの巨額の資金提供が影響しているとしたら見過ごすわけにはいかない。
 国会は国政調査権を駆使し、真相を明らかにすべきだ。関係者の国会招致も躊躇(ちゅうちょ)してはならない。
 案里議員辞職に伴う補選は四月二十五日に行われる。衆院北海道2区、参院長野選挙区と同日程だ。初の国政選挙となる菅政権にはコロナ対策を巡る不手際と合わせ、厳しい戦いとなるだろう。
 緊急事態宣言下の与党議員による深夜のクラブ通いなど、政治への信頼が著しく損なわれる事態が続く。一連の選挙では菅内閣への審判に加え、政治の在り方そのものが問われることになる。