総務省接待問題 隠蔽、改竄しないよう
2021年2月6日 中日新聞
こんな官僚接待がいまだに行われていたとは、驚きと怒りを禁じ得ない。しかも、接待した側に菅義偉首相の長男がいた。政官癒着の典型ではないか。徹底的に調査し、真相を明らかにすべきだ。
総務省の谷脇康彦、吉田真人両総務審議官と秋本芳徳情報流通行政局長、湯本博信官房審議官の幹部四人が昨年十〜十二月、衛星放送事業や番組制作などを営む「東北新社」幹部の会食接待を受け、手土産やタクシー券も受け取っていた。週刊文春が報じた。
国家公務員倫理規程は、利害関係者との会食について、自ら飲食代を負担する場合でも一万円を超えるときは倫理監督官への事前の届け出が必要としている。
会食は無届けで、当初は利害関係者との認識がなかったとしているが、総務省は放送事業を所管する。衛星放送事業を営む同社を利害関係者と認識していなかったのなら職務怠慢にほかならない。
それとも利害の有無にかかわらず、官僚が接待されるのは当然と思っていたのか。そのいずれでも国民感覚と著しく乖離(かいり)している。
首相によると、長男の同社入社には「いろんなご縁」があった。首相は総務相を務め、長男は大臣秘書官だった。首相は長男と「完全に別人格」と強調するが、「完全に無関係」ではあり得ない。
同社は首相やその長男という立場を利用し、事業許認可などを有利に進めようと考えたのではないか。総務省側も首相の長男だから断れなかったのではないか。国民にそう見られても仕方がない。
一連の接待によって、総務省が同社に何らかの便宜を図ったか否かは現時点で分かっていない。
ただ、政治家と官僚との関係や癒着、双方の倫理観、不祥事に対して、国民の厳しい目が注がれていることを忘れてはなるまい。
安倍晋三前政権時代には森友・加計両学園や桜を見る会を巡る問題など、権力者と近しい関係者を優遇する政治が横行した。総務省官僚への接待は菅政権でもそれが続いていることをうかがわせる。暗澹(あんたん)たる気分だ。
国会は予算案審議やコロナ対策など課題山積だが、この問題を闇に葬ってはならない。関係者の招致を含めて、国政調査権を駆使して徹底的に究明すべきである。
総務省は接待が法令に違反しないか調査しているという。自浄能力は示すべきだが、調査結果を隠蔽(いんぺい)したり、改竄(かいざん)したりという、財務省が犯した愚を二度と犯さないよう、くぎを刺しておきたい。