『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGTIVES FROM TROY   第7章  築砦  175

2013-12-25 07:58:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お~いっ!者ども、朝めしを終えたら行くぞ!海は凪いでいる』
 テカリオンは全員の尻をたたいて、船だまりの浜へと向かった。キドニアの船だまりから、アヱネアスらのいる現在のニューキドニアの浜まで8キロメートル余りである。漕走で1時間くらいの行程距離である。心の中ではいっ時でも早くと急いていた。
 彼は、親しい間柄であるパリヌルスの事を思いやった。
 『奴もやったな。クレタを荒らしまわっていた海賊を一掃したとは。おかげで安全な航海ができるといったところか。重畳、重畳』
 キドニアの海岸一帯を眺め見ながら、風を気持ちよく身に受けていた。
 一方、朝食を終えたパリヌルスは、じい~っとはしておれなかった。彼は、他動的なそわそわに身が動いた。彼は何かにそそのかされるように浜へと駆け下りていく、浜に降り立つ、海を見渡す、波を割ってこちらに向かってくる一隻の交易船を目にした。
 目を見張った、『あれは!』息をのんだ。
 『テカリオンの船だ!』彼が待っていたものであった。彼は、おもわず開いた左の掌を右の拳で打った。
 『これで俺の目が開く。これでチョッピリだが先の未来が見える、足元の未来ではない、また、遠くの未来でもない、チョッピリ先の未来を俺は見たいのだ』
 彼は浜を見まわした。ギアスの姿は見えない。目についたのはソリタンのハシケであった。彼は浜にいる張り番の者にハシケを海に出させた。テカリオンの船が着き次第、即、行けるようにと手筈を整えた。
 船上のテカリオンの姿が見えてきた。彼は手を打ち振った、テカリオンも手を振ってこたえる。二人の邂逅の喜びのひと時であった。テカリオンの船は、浜から60メートルくらい離れた海上に停船した。
 パリヌルスは乗ったハシケを急がせて近づいていく、テカリオンの大声が耳に届いた。
 『おう、パリヌルス、達者か?』
 『おう、この通りだ。お前も元気か』
 言葉を交わしている間にハシケは、テカリオンの船の船べりに接していた。顔を合わせた二人は、『おうっ!』『おうっ!』の掛け合いである。言葉は不要であった。テカリオンは船上の者たちに指示を出している。
 『準備してきた品物をハシケに積み込んでくれ』
 荷がハシケに積み込まれる、テカリオンがハシケに乗り移って、浜を目指した。
 『おいっ、パリッ!達者にしていたか、怪我はしていないようだ。重畳、重畳』
 テカリオンは、パリヌルスの五体をしげしげと眺めて安堵の表情で微笑んだ。