昨年10月から12月に放送された10話構成のドラマ。都立高校定時制課程で活動する科学部が創部から学会発表(高校生セッション こうした催しが実際に開催されていることを初めて知った)に至るまでを描いた物語。

ネタバレを防ぐため、ストーリーの詳細は記さないが、科学部員の4名やその家族、また周囲の学生や主人公である顧問の先生まで、キャラクターがしっかり描きこまれている点が素晴らしく、ドラマにどんどん引き込まれていく。
後日、最終回を見る前に、原作小説を購入して第3話のOpportunity の轍を読んだのだが、すでに視聴したドラマ版がそのまま活字からイメージされたことに驚いた。キャラクターや場面の風景、その演出や美術デザイン、そして脚本も現在のイメージ、ニュアンスを本当に大事にして映像化されていることがわかる。
もちろんドラマ版は原作のストーリーを膨らませる為に、原作にはないシーンを挿入しているのだが、それすらも原作のどこかに書いてあるのでないかと探してしまったほど、原作者の思いを大事にして創られている。

最終回は準主役である小林虎之介さん演じる柳田 岳人と伊東 蒼さん演じる名取佳純がスピーチする学会発表のシーンがこの静かなドラマの中で、望外のカタルシスをもたらす。
また、第4話で若い生徒と衝突したイッセー尾形さん演じる長峰が自身の人生と奥様の話をするシーンは、余計な回想シーンなどを挿入することなく、イッセー尾形さんの語りのみで押し切った演出も素晴らしい。

原作とドラマがここまでシンクロしている作品はこれまで見たことがない。NHKオンデマンドやU-NEXTなどで有料視聴できるが、月間ギャラクシー賞を受賞したことだし、もう一度地上波で再放送してほしい。