(初めての船旅)

(豪華客船、十階建て以上ある船室)
旅をするものにとって、船旅は憧れの旅行である。
ボクも世界を旅行し始めてから一度は船旅を楽しみたいと思っていた。
しかし、なかなか実行に移せなかったのには理由がある。
1.船室によって旅行代金に差があること。
旅行者の募集内容を見ても、100日間世界一周で例をとれば、
A船室は2千万円、E船室は3百万円也の差があることである。
日本のフェリーでも特等室から三等室まであり、
特等室は個室のツインベッドになっているが、
三等室は雑魚寝である。
飛行機のファーストクラスとエコノミーの差ではなく、
歴然とした大差があることだ。
何よりも旅行代金が高額になること。やっぱり、これが一番の理由かな。
同じ場所を旅行するなら飛行機で行くほうがよほど安いのである。

(船内の飲食店アルコール以外はフリーのプロムナード)
2.この船室の差(代金の差)によって、
船内の扱いが違うと想定されること。
たとえばレストラン、AレストランはA船室以外の方はお断りと
格差があると想定される。
船室によってきっと乗務員の扱いも違ってきそうである。
日本では食事くらい金さえ払えば、どこでも食べさせてもらえる。
一見(いちげん)さん(初めてのお客さん)お断りという、
お店も日本ではあるそうだが、
そんなところはこちらで願い下げである。

(十数階ある船室内へ行くエレベーター)
3.船室外では、フォーマルウエアを着なければならない。
なんか上流社会のパーティにでも、
参加しなければならない雰囲気があることだ。
気取った格好で気取った食事をし、
堅苦しくもクラシック音楽を聴きながら、
二時間もかかって過ごす食事中は、
マナーを守ってナイフ・フォークを使い、
スープをすする時は音を立てないとか、
背筋を伸ばしてスプーンを口に運ぶとか、
レディの気を逸らさないように気使いして、
豊富な話題でスマートなおしゃべりをしなければならない、
などなどである。

(フォーマルウエアの人達)
飯くらい好き勝手に食べさせてほしいものだ。
何よりもフォーマルウエアとはどんな服装かさえ知らない。
それにパーティでの社交ダンス。
ボクだけかもしれないが、
大和心の日本男児に女性の手をとりリードして踊るなど、
照れくさくてできるわけが無い。
社交ダンスは(チークダンスはお得意だが)
一度もやったことが無いのである。
4.搭乗客は日本人が少なく、毎日を英語で話さなければならない。
英語はそれこそ65年も昔に勉強して、
そのころは日本の外国人向けの英語放送も難なく理解できたが、
今では英語放送も理解できず、
日本語ですら話すのに困るくらい言葉が出てこない。
まして英語と来たら話したい単語がまるで出てこない。
書いたものなら何とか思い出せるのであるが・・・
船旅を億劫に思っていた理由はこんな理由であった。
まだほかにもある。
ここまでお読みいただいた読者の皆さんは、
「それなら船旅なんか止せばよろしいじゃありませんか」
と仰るに相違ない。
でも旅人は、一度は船旅をしてみたいものである。

(豪華客船の船尾)
<つづく>