二人の子供たちに、
彼らが就職すると、すぐ伝えた事がある。
「年齢30歳になるまでに独立するように。
出来れば結婚して独立する。これが理想的だ。」
そう伝えた。
人が生まれてきて、なさねばならないことがある。
それは子孫を残すことだ。
自分が生まれてきたのは、子供を作り一人前に育てる。
その子供が次の子をはぐくみ生活することを確認したら、
人として生まれてきた甲斐があるというものだ。
兄は28歳、妹は25歳で結婚独立した。
挙式費用を貸して欲しいと言われたが、
全て出してやったというと、聞こえが良いが、
兄妹の双方がそれぞれ働きに出てから、
毎月の食費として、兄妹がカミサンに渡していた費用を、
全て本人たちの名義でそれぞれ積み立てておいたので、
結婚費用としてその預金通帳を渡して終りにした。
妹は勤務年限も少なかったので、
カミサンが少し足してやったらしい。
どうにか二人の子供も新婚生活に慣れて、
ボクが定年退職したときには、
兄には男女二人、妹には男子一人の子供
(ボクに言わせれば孫)も出来て、
順調に生活していた。
妹は、結婚式に集まった人たちから貰ったお祝い金を、
頭金にしてローンで住宅を購入した。
それを知って、兄の方も住宅を手にしようと、
身分不相応にも一億円近い住宅が買いたいから、
頭金になるお金を貸してくれと言ってきた。
不動産バブルの時代にである。
サラリーマンが一生の内に稼ぐ給料は、
当時3億円と言われていたが、
その三分の一の値の住宅を買おうというのである。
こんなことを考えたら、腹が立ってきた。
「海外旅行するお金はあっても、貸してあげるお金はない。
ボク自身お金は銀行からローンで借りる以外に
お金は借りていないし、
親に借金をするくらいなら、
家は買っていない。
男は自分の人生は自分の力で切り開くもの。
出来なければ出来るように努力をする。」
と断った。
その後、夫婦は近所の駅前に出来たマンションを
買ったと連絡が入った。
孫たちも順調に成長し、三番目の男子が今年大学院へ、
一番年上の女の子が、社会人三年生で、
二番の孫で男子は、社会人2年生になり順調に生活している。