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砂の狩人 / 大沢在昌

2005-11-08 15:05:03 | 読書
最近、大沢在昌が自分の中でリバイバルしたので、「砂の狩人」を読んでみました。
前作「北の狩人」を読んだのはずっと前なので、記憶がおぼろげな状態で読み始めます。


題名:砂の狩人
著者:大沢在昌
発行:2005年8月 幻冬舎
ISBN:4344406788(上巻)/4344406796(下巻)
価格:上下巻各721円(税込)


■ストーリー

漁師町で暮らす元刑事・西野の元へ女性警視正の時岡が訪れ、非公式な調査を依頼する。
東京で発生している連続猟奇殺人の被害者は、公になっていないが暴力団組長の子息らであり、暴力団と対立する中国人グループが疑われている。
被害者の身元が公になれば暴力団による中国人狩りが発生することが懸念されるが、被害者の身元を知ることができるのは警察内部の人間だけと考えられた。
警察関係者が暴力団と中国人グループの対立を仕組んだ可能性があり、そのため時岡は過去がある元刑事だが捜査にかけては凄腕だった西野に調査を依頼する。
西野は知り合いの暴力団組長の娘サチの無事を確認するため古巣の東京へ戻るが、西野が会った直後にサチも殺害されてしまう。
依頼を受けるか迷っていた西野だが、サチを殺した犯人を見つけるため、調査を始める。

■感想

読み始めてから違和感が…北の狩人の続編なんじゃなかったっけ?
前作は、東北から新宿へ来た朴訥な刑事が、執念で父親の死の真相を暴いていく話にコギャルが絡んで、重くカタい設定と血なまぐさいストーリー展開の割りに軽く読めるという不思議なバランスの小説だった記憶があります。
でも西野って前回出てきてないよね?
西野の過去が前作に出てきた話なのかと誤解していて、思いだせんなーと悩みながら読み進んでましたが、そうじゃなかったんですね。

快楽殺人者の少年を追い詰めたが、「すぐに社会に出てくる」「次はもっと上手にバレないように殺す」と西野へ告げる少年。
それが本気だと分かった西野は、いずれ起きる事件を防ぐため、無抵抗の少年を射殺。

…って過去なんですが、このストーリーで1本書けたんじゃないかって感じです。
っつーかそっちのストーリーの小説読みたいよ。

そういった過去があって警察を辞めた経緯もあり精神的に死んでるものの、猟犬のように的確に犯人に迫っていく西野。
調査の過程で新宿署の刑事・佐江やサチの父親の組員・原と係わるようになり、時には敵対しつつも互いを認め合い、行きがかり上協力して調査を進めるようになります。
佐江は前作・北の狩人でも出てきたキャラですが、ヤクザの原もかなり強烈な個性で印象深いです。

中国人グループや暴力団の抗争で荒れる新宿で、我が身の危険を顧みず調査を続ける西野の姿は、佐久間公シリーズの「心では重過ぎる」にちょっと重なるイメージもあります。
ただ、佐久間公がギリギリのところで自身を護るつもりでいるのに対して、この西野は調査を優先させて身の安全を無視して最短距離で突き進んでいます。
それが過去、自分のやってしまったことに対する清算をしたいという無意識の現われだったのでしょうが、読む方はヒヤヒヤしながら見ているしか無い状態。

危険な状況下で調査を続ける西野の姿に、ヒリヒリとした乾いた熱さのようなものを感じつつ読みました。
いやー、面白かったです。

とても良かったので、久々に「北の狩人」を引っ張り出してきて再読することにしました。
全然違う雰囲気の話の気がしますが、佐江刑事も出てくることだし。
次はちょっと過去へさかのぼって、西野が少年を射殺することになった事件のストーリーを読んでみたいですね。
書いてくれないかなぁ。


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