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グレイヴディッガー / 高野和明

2005-08-29 13:00:37 | 読書

書名:グレイヴディッガー
著者:高野和明
発行:2005年6月 講談社(講談社文庫)
ISBN:4062751208
価格:701円(税込)


以前、書店で面白そうな本はないかと物色していたとき、大好きな「宮部みゆき」の文字が目に飛び込んできました。
「うぉっと新書か?」と思ってよく見たら、高野和明の「13階段」。
帯に書かれた解説者の宮部みゆきの名前、デカ過ぎです…その作戦にものの見事に釣られて買ってる自分も自分ですが。
あらすじをざっと見た感じでは、面白いかも知れないけど手を出す気になる程ではない雰囲気。
しかし宮部みゆきが推すのであれば、読んでみない訳にはいかないじゃないですか?

「火車」「魔術はささやく」「スナーク狩り」「レベル7」など比較的初期の宮部作品の方が好きで、最近の作品は洗練されたけど少し魅力が減った感が個人的にはあります。
しかし時代モノを含めどの作品を読んでも今までハズしたことが無いし、その宮部みゆきの推薦ですからね。
どれどれと思いつつ読んでみたんですが、ものすごく面白かったので大正解でした。

今後の作品にも期待していたんですが、「グレイヴディッガー」がNatsumiさんのブログで誉められてていたので、入手して先日の出張時のヒマつぶしに読んでみました。

悪党・八神は子供たちの夢を喰うように詐欺った自分に嫌気がさし、生き方を改めるため何か善行をしたいと考えて骨髄バンクにドナー登録する。
適合する白血病患者が見つかり、骨髄を提供するために入院する予定の八神だったが、入院中の小遣いを借りようと寄ったホストの部屋で死体を発見。
直後に見知らぬ3人組に襲われ、窓から脱出し屋根を伝って逃げ出す八神。
このホストの死体はこれから発生する連続猟奇殺人の幕開けだった。
2日後の移植手術のため、患者は骨髄を空にしている状態であり、八神が病院に行かなければ患者は死亡してしまう。
警察に助けを求めても事情聴取のために拘留され移植手術には間に合わなくなる。
謎の男たちに追われ、警察に頼ることもできず、手持ちの金も少ないまま、東京の北端から南端の病院へ向けての八神の逃避行が始まった。

視点としては八神本人と事件を追う警察サイド、その中で捜査を指揮する警視と八神を知る刑事古寺に別れています。
八神を追うグループは警察以外にはホストの部屋で襲い掛かってきた謎のグループと、それとは別に猟奇殺人を繰り返す謎の男。
何度も襲撃を受けてノンストップで必死に逃げ続ける八神と、次第に明らかになっていく事件の内容、謎のグループや男の目的。
すごく楽しいエンターテイメント小説でした。

タイムリミットまでノンストップなストーリーにはぐんぐん引き込まれて面白いです。
大沢在昌の「走らなあかん、夜明けまで」をちょっと思い出したなぁ。
(あーこの続編まだ読んでなかった、今度読もうっと)
ノンストップな小説はノンストップで読まないと興醒めすることがありますが、今回は出張の移動中にサックリ読み終えることができて良かったです。

この「グレイヴディッガー」では、主人公のキャラが立ってるのも良いですね。
最近読んだ小説はどうにも感情移入できない主人公ばかりで楽しめなかったんですが、悪党・八神の憎めないキャラがツボにハマりました。

カーチェイスでクラッシュ後など、随所のご都合主義的な展開にしても「面白ければOK」で全然気になりません。
銃弾から身を守るマントや鉄仮面だけでは説明がつかない神出鬼没な魔人グレイヴディッガーの不死身っぷりなど、解明されない謎が残っていたりする点については、ホラー的な余韻を残したかったんだと解釈したので全く問題なしです。
個人的に一番気になったのは、ドナーのHLA型があっさり適合してるように見えた点ですが、それは「娯楽小説だし」ってことで。
(「半落ち」などと違って、この小説読んで骨髄ドナー登録する気になる人はいないだろうしねぇ)

「13階段」とは全く方向性の違う小説でしたが、読者を楽しませるツボが分かっているようで、とても面白かったです。
ってことで今後も高野和明に期待です。


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2 コメント

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どーもでした (herniano)
2005-08-30 23:49:49
Natsumiさん、面白い小説を教えていただいて感謝してます。



やっぱり宮部みゆきは良いですね。

でも時代モノは好みじゃなかったですか?

アレはアレで味わい深くて面白いと思うんですが、ちょっと入りにくいのかなぁ?
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Unknown (Natsumi)
2005-08-30 10:19:26
宮部みゆき、私も大好きです。

時代物以外はほとんど全部読んでますが、やはり「魔術はささやく」などの初期の作品が好きです。

宮部さんが絶賛しているだけあって、「13階段」は本当によかった!

「グレイヴディッガー」は娯楽度が増して、ドキドキしながらも気楽に楽しめる作品ですよね。

なかでもやはり小悪党の八神のキャラがいい!

今後の作品が楽しみですね。





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