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蚊トンボ白鬚の冒険 / 藤原伊織

2005-06-17 17:53:53 | 読書
5/23の東京出張の帰り際、羽田空港内のショップでイオリンのが文庫化されてたのを見つけたので確保しました。
最初、上下巻と気付かずに下巻だけ手にとってレジに並び、さて読むかと思ったら下巻だったんで慌ててショップへ戻り上巻も買ってきました。
売店のレジのお姉さん(←世辞)が気付いて、微妙な苦笑いを浮かべられつつ。

読み終えてからちょっと時間が開きましたが、感想などを。


書名:蚊トンボ白鬚の冒険
著者:藤原伊織
出版:2005年04月 講談社(講談社文庫)
ISBN:4062750554(上巻)/4062750562(下巻)
価格:上下巻各661(税込)


藤原伊織には「テロリストのパラソル」から入りました。
自分はかなり保守的な人間で、なかなか新天地を開拓しようとしません。
なので本を読むときも気に入った同じ作家のものだけを選んでしまいがちです。
しかしいつもいつもお気に入りの作家の新作が出ているはずもないので、そんなときはやむを得ず「面白い小説無いかな~」と読んだことの無い作家の本を物色しています。

「テロリストのパラソル」は本の紹介が何やら良さ気だったので、買ってみました。
ハードボイルドって大沢在昌くらいしか読まないんだけどな~と思いつつ。
結論から書くととても面白くて気に入ったので、続けてイオリンの「ひまわりの祝祭」「てのひらの闇」と読み進みました。
ちなみに「ダックスフントのワープ」「雪が降る」は未読です。

イオリンの主人公って、ハードボイルドっちゃーそうなんだろうけど、単なる無鉄砲というか自暴自棄というか、自分を捨ててるだけな気がしなくもない。
ポリシーというか矜持があってそういう姿勢をとり続けてる人間なんだけど、昔大切にしていたものを失ってしまって、今は自分を大切にしない生き方をしている人間。
もう失うものがないから怯むことがないし、自分自身さえ守ろうとしていない感じ。
そんな男があることで事件に巻き込まれて、何があったのか、真実は何なのかを知るために、その無鉄砲っぷりで淡々と前へ前へと突き進んでいく訳です。
最初は敵だった奴から何故か気に入られて助けられるようになったり。
そんな展開をしつつ自分を取り戻していく、という話なのかと思ったらあんまりそういう訳でもなく最期までマイペースな感じ。
ってゆーのがそれまで読んできた小説の印象でした。

ストーリー展開を書くと↑こうなっちゃうんですが、すごいなと思ったのは何というか小説全体の乾いた雰囲気。
乾いてるんですよね、そんでもって息苦しいというか、読んでいてツラくなるんです。
読むのがツラいんじゃなくて、ツラい気持ちを楽しまされる羽目になるというか、何というか…主人公のそのあまりにも自分を守らないっぷりがツラいんですね。
かなり非現実的な主人公なんで、自分と比較してツラくなるとかそんな話ではなく、「頼むからもっと自分を守ることもやってもらえないだろうか」とヤツの身を心配しながら読んでる感じです。
つまりは自分も「何故か主人公を助けてくれるようになる他の登場人物」と同じ気持ちにさせられてるってことなんでしょうか。
この辺の感想は当然、人によって違うはずなんで参考にならないでしょうが、未読で興味をもたれた方は是非どうぞ。

さてやっと本題の「蚊トンボ白髭の冒険」です。
主人公の頭の中に蚊トンボ(ガガンボ)が入ってしまい、その蚊トンボが「白髭」と名乗って脳内から話しかけてくるという、いきなりファンタジックな展開。
この白髭は主人公の筋肉を一瞬だけなら超人的に動かすことができるという設定。
アパートの隣人の男がさらわれそうだったのを助けたばかりに、株屋とヤクザのすったもんだに巻き込まれていきますが、白髭の能力のおかげでピンチを切り抜けていきます。
何だかこれまで読んできたイオリンの小説とは全く違うノリだったので戸惑いますが、読み進んでいくと主人公はいつもの無鉄砲野郎なので安心できます。
相変わらず乾いた雰囲気ですが、ファンタジックな設定と白髭との軽いノリの会話に中和されて、楽しく読むことができました。
いつもなら主人公と一緒に苦しみながら読んでるもんなぁ…それでも終盤はやっぱちょいツラかったけど。

元々イオリンはありえねーって感じの人間が主人公なので、開き直って今回のように堂々とファンタジーにした方が良いのかも。
主人公と関わっていく隣人の株屋やそれを追う巨漢のヤクザ、年上のヒロインや怪人カイバラなどの登場人物も面白いです。

「テロリストのパラソル」とのノリの違いが受け入れられない人がいるかも知れませんが、自分にはとても面白い小説でした。
これまで「ダックスフントのワープ」はちょっと敬遠してて未読なんですが、「蚊トンボ白髭の冒険」を読んでからはチャレンジする気になってきました。
「雪が降る」も読んでおこうかな。

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