OZ.

Opened Zipper

小説「サクリファイス」

2010-10-13 00:00:01 | 折りたたみ自転車(MFWS-206F)
(2010年8月下旬)
いつものように子供の英語教室の待ち時間に書店で時間潰ししていましたが、目新しい自転車雑誌が見当たらず手持無沙汰。
また自転車マンガでも漁ってみるかな~と思いつつ店内をフラフラしていると、表紙にロードレースの写真が使われている文庫本がありました。
何だコレ?
「サクリファイス」…自転車小説? ふーん、サスペンスですか。
近藤史恵って人は知らなかったな。

自分は自転車好きと言っても、激安折りたたみ自転車を変態的にカスタムすることにハマっているだけで、ロードレース自体には興味がありません。
しかし自転車ネタに飢えていたので、ロードレース物でも良いか~と思いつつ手に取って確認します。
帯のアオリやら巻末の解説やらを読んで確認してみますが、「第5回本屋大賞第2位」「第10回大藪春彦賞受賞作」と誇らし気に書いてあり、内容はなかなか面白そう。

本屋大賞ってのは知らなかったけど、本屋さんが選ぶんだろうなぁ。(←確認したら、まぁそんな感じ)
売る側の推薦ってどうなんだろう…ハードカバーとかの比較的稼げる方の売りたい本から選ぶんだろうか。
でも自分が手に取ったのは文庫化されたものなので、わずか460円とお得な感じです。

書名:サクリファイス
著者:近藤史恵
ISBN:978-4-10-131261-3
発行:2010年2月 新潮社(新潮文庫)
価格:460円

自転車モノのサスペンスと思いながら読んでましたが、終盤まであまりサスペンス感が無く、フツーに自転車レースの小説だなーと思いつつ読んでました。
何でだろう、サスペンスというとバタバタ人が殺されてゆくような気がしてしまうのは、そういう本やらTVドラマやらを見過ぎなせいか。
また主人公の無機質な感じと、淡々と描写されているせいで、サスペンス感が薄いのかな。

それでも主人公がうっすらとチームのエースに対して感じているものが、疑惑→不安→怖れと徐々に強くなっていく描き方が、上手いな~と思いながら読みました。
プロの自転車レーサーとして、トレーニングやレースの日常の中で、そのエースに対する異物のような不安感が徐々に強くなっていく感じ。
終盤にかけて、更に周囲からの情報で危機感が強まっていき、そしてクライマックスへ。
その後はまた最後の謎解きまで淡々と展開し、淡々と終わっていきますが、何だか良い余韻を残して読み終えました。

興味が無くて全く詳しくないロードレースですが、この小説の中で分かりやすく説明してくれているお陰で、なるほどそーなのかと納得しながら読みました。
なるほどねー、アシストはエースの前で引くだけじゃなくて、逃げに混じってペースを落とさせるとかな仕事もあるのねー、ふーん大変だねー…とか。
それまでに観たことがある自転車アニメ映画「茄子 アンダルシアの夏」「茄子 スーツケースの渡り鳥」のレースシーンとか、自転車TV番組「銀輪の風」の中のロードレースのシーンなどを思い出し、そーかあれはそういう駆け引きのシーンだったのかと今頃理解したりとか。

この本を読む少し前にNHK BSでツール・ド・フランスの総集編みたいな番組があったので、どんなもんなんだろうと流し観していました。
NHKも分かりやすく説明してくれてたんで「ふーん」と思いつつ観ていましたが、ロードレースって不思議なスポーツだなーというのが主な印象でした。
ライバルがメカトラブルになったら待つのがフェアとか言われてもな~、フツーはマシンの整備も含めそのチームの責任じゃなかろうかと思ってしまったり。
しかしメカが剥き出しの自転車でのマシントラブルは、もう運の問題と割り切られてるんだろうか。
それにしてもあんな山を自転車で走って越えようなんて、皆、頭イカレてるんじゃなかろうかってくらいスゴ過ぎるな。
ある1日のレース(ステージ)内での駆け引きだけじゃなく、何日にも渡って行われるレース全体の中でのチーム間の駆け引きとかも少し分かって、ふーん面白いなーと。
NHKでは客観的に解説してもらっていましたが、小説での説明はレーサー目線な内容もあったので、より分かりやすかった気がします。

という訳で小説として楽しみつつも、色々勉強になりました。
買って良かったです。>サクリファイス

サクリファイスの続編のエデンも発売されているようですが、ハードカバーを買う気は微塵もないので、数年後に文庫化されるのを待つことにします。