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Opened Zipper

北の狩人 / 大沢在昌

2005-11-18 08:21:16 | 読書
大沢在昌の「砂の狩人」が面白かったので、前作の「北の狩人」を引っ張り出してきて読み返しました。
読んでいくうちに思い出してきて、「あー、そうそう、コレコレ」などと思いつつ。
↓今は既に文庫化されているようですが、昔買った本なので新書のまま。


題名:北の狩人
著者:大沢在昌
発行:1998年 幻冬舎
ISBN:4877289291(上巻)/4877289305(下巻)
価格:上下巻各821円



新宿に現れた東北の若者・梶雪人が、暴力団が関係する場所を選んで現れ、「田代組」に関する情報を得ようとし始める。
少人数の武闘派だった田代組自体は、ある事件をきっかけに10年以上前に既に無くなっていた。
当時の田代組構成員で、現在は広域暴力団に所属する宮本は、梶の動きに注目する。
新宿署の刑事・佐江は、梶の行動によって新宿の暴力団関係者の異変が起きていることに気付く。
梶は秋田県警の刑事であり、同じく刑事だった父親が殺害された事件の真相を調べるため、その事件に関係した田代組の関係者を捜していた。

前作と言っても、「砂の狩人」との共通点は刑事・佐江だけですね。
マタギの孫で狩人としての勘が働くといっても、あまりにも的確過ぎる梶の行動ですが、そこはそれ「運命」っつーことにして。
女子高生の杏を出して梶に絡ませたことで、ハードボイルドなストーリーなのに妙にソフトな感じに仕上がっちゃってます。
杏は最初は暴力団関係の引っ掛けバーでバイトしてて梶をカモろうとし、もうどうしようもないクズって感じの女子高生だったんですが、梶と出会ってから次第に変化していく姿が良いです。
「そんなこたーありえねー」などと心のどこかで思いつつも、「これは娯楽小説なんだから」ということで。
お陰で、血なまぐさいシリアスな設定と展開にもかかわらず、軽く読みやすい小説になっているので、自分的にはとても楽しめました。

よく考えてみたら大沢在昌の佐久間公とか狩人シリーズって「ある目的を持って調査しにやって来た男が、その行動によってその場所で保たれていたバランスを崩していき、混乱を生じさせて怨まれ疎んじられつつ、真相に近づいていく」的な話なのね。
主人公を危険な目に会わせる必然性を生じさせるためには、そういう設定になるんだろうなぁ。
いえ、面白いから全然良いんですけどね。

久々に昔の大沢作品を読んでみましたが、やっぱり面白いなぁこの人と再認識です。
また比較的新作を漁ろうかなと思ってますが、良さ気なのが見つからなかったら昔のを再読するのも良いかな。