白老にできた国立アイヌ民族博物館の野外の一画にとあるポーランド人の胸像があります。ブロニスワフ・ピオトル・ピウスツキさん。 気づかぬうちに通り過ぎてしまうかもしれませんが、たまたま博物館の野本部長にご案内頂いたので、目に留めました。 しかし、きちんと記憶には留めていなかったのですが、その時に彼の逸話が小説の助演男優のように描かれている「熱源(川越宗一著)」という2020年の直木賞小説があることをお話頂きました。
すっかりと私は忘れていたのですが、黒松内の図書館で時々アルバイトをしているCKから「高木さん、熱源ありますよ」と言われて、半場押し付けのように(ごめん・・そのときはそうなのぉ 程度の感じだったので)借りてきました。
この長編小説にはまりました。
時は1990年前後の樺太が主な舞台で史実に基づいたフィクションです。 彼はロシア帝国に占領されたポーランド人でロシアの同化政策で母国語を話すことを禁じられたままサンクトペテルブルグ大学の学生となりますが、1887年ロシア皇帝アレクサンドル3世暗殺計画に連座し懲役15年の判決を受けてサハリン(樺太)へ流刑されました。当時にサハリンには、アイヌをはじめギリヤーク等の複数の先住民,和人、ロシア人が雑居していました。流刑囚と言ってもいくつかの段階があり、彼は休日には周辺へ出歩ける自由度のある囚人でした。法学生でしたが、先住民の暮らし文化に興味を持ち、その余暇を使い周辺集落で独学の民俗学的活動を始めたのです。 当時のロシア(西洋先進国)は、人類学民俗学が盛んになりつつあり、列強の優越性をしめすうえでも、「未開民族」の劣等性を研究、植民地化、占領同化の正統性に学問を利用しようとしていました。 彼の独学研究はロシアに認められ研究に没頭、ロシアからも援助されるようになるのですが、先住民と共に暮らすうちに、この極寒の地で生きてきた先住民の優れた智恵・文化と西洋の文化の何が違うのか悩んでゆくのです。さらにロシア人化させられる自身のポーランド人として源血にも深く気づき直してゆきます。登場人物には、アイヌと日本人の混血人物、本人もアイヌと結婚し子孫を残しました。ロシアの同化政策に翻弄される樺太アイヌ人等先住民族の生き様が絡み合ってゆきます。 さらには、日露戦争が勃発し、樺太にも日本軍が上陸して来て戦闘にも巻き込まれてゆく(今、ここまで読んでいます)・・・
小説の題名の「熱源」は、それぞれのうちなる熱いもの、異なる血が大きなテーマなのですが、文化風習が違えども・・結局、それらに違いがあるのか、我々、皆、同じ「人」なんだということが伝わってきます。
新年早々に、良い本に巡り会えました。
ウポポイに再度でかけて、彼の胸像と向き合いたい。
ピウスツキ⇒
ちなみに、この本の主人公は、アイヌ人です。
山辺 安之助(やまべ やすのすけ(やまのべ、とする場合も)、1867年(慶応3年) - 1923年(大正12年)7月9日)は、白瀬矗の南極探検隊に樺太犬の犬ぞり担当として参加した樺太アイヌ。アイヌ名「ヤヨマネクㇷ」(Yayomanekuh)[1]。樺太アイヌの指導者として、集落の近代化や、子どもたちへの教育に尽力した。著書に『あいぬ物語』(樺太アイヌ語による口述を金田一京助が筆記)。口承文芸の語り手としてもヤシノスケ(Jasinoske)という名前で、ポーランド人の民族学者ブロニスワフ・ピウスツキに説話を語っており、その説話はMaterials for the Study of the Ainu Language and Folklore (Cracow, 1912)に収録されている(21~23話)[2]。