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トマ・ピケティの「21世紀の資本」と世界の富豪

2020-07-14 21:08:26 | ビジネス

Huffpostに、世界の富豪が「私たちに課税をして!」という訴えの署名をした書簡が、公開されたという記事があった。
Huffpost:富豪「私たちに課税して」新型コロナによる危機を乗り越えるため。ディズニー創業者一族などが署名

この署名に応じたのは、世界各地の富豪で構成されている組織(そのような組織があったことを初めて知った)「ミリオネアズ・フォー・ヒューマニティー」の会員が、それぞれの政府に「私たちにもっと課税をするように」という、書簡に署名をした、ということのようだ。
NHKだけではなく、ブルームバーグなどが報じている、ということを考えると単なる「善意の売名(をする必要が無いほどの著名な一族だが)行為」ではないだろう。

そしてこの記事を読んだときに思い出したのが、2014年日本でもベストセラーになった、フランスの経済学者・トマ・ピケティが書いた「21世紀の資本」だった。
私は読んだことが無く、本の概要がP・コトラーの「資本主義に希望はある」の中に、トマ・ピケティの「21世紀の資本」の一部が引用されていたのだ。

ピケティの「21世紀の資本」を読まれた方(多くの方は、700ページを超えるボリュームに挫折されたのではないだろうか?)はご存じだと思うのだが、ピケティの本では新たな「資本論」を述べているわけではない。
膨大な過去の統計資料から、「資本とは何か?」等について論じている。

その膨大な統計から「富の継承」ということが、書かれているのだ。
世界の富豪と呼ばれる人たちの多くは、「自分で富を築いたわけではなく、先祖からの富みを引き継いでいる」という指摘だった。
この指摘から、コトラーは「このような富の継承者に、より多くの課税をすべきである」と、著書で述べていたのだ。
「累進課税(=所得が多い人に課税負担を重くする)」によって、国の税収を安定させるだけではなく、「富の再分配」を政府を通じて行う、という考えを提案していた(と記憶している)。
正に今回のディズニー創業家一族の提案は、コトラーが指摘した内容のことを指しているのだ。
事実、米国では第二次世界大戦中、このような「富を継承している一族」に対して、相当重い税負担を強いていたようだ。

4年ほど前に「62人の大富豪が、全世界の半分の富を持っている」と、話題になったことがあった。
この62人の中には、Microsoftのビル・ゲイツやAmazonのジェフ・ゾベス、Facebookのザッカ―バーグのように、自ら事業を立ち上げ、巨万の富を得た人物もいるが、多くは先祖から引き継いだ資産が、新たな資産を生み富豪となっているのだ。
逆に貧困層に生まれた人達は、その貧困から脱する為に努力をしても難しい、という指摘もある。
それは教育の問題であったり、人種的な差別によるものであったりする。

今回の「新型コロナウイルス」の感染拡大により、重篤な状態あるいは死に至ってしまった人たちの多くは、この「貧困層」に多いという指摘が、米国ではされている。
医療費のほとんどが自費である米国では、「適切な医療を受ける」ということができない、という人達も数多く、元々「3密」状態で生活をしているので、一人感染してしまうとあっという間に拡がってしまうのだ。
「命の選別」といっては語弊があるが、経済格差によって命の選別が行われている、という現実があるということも「新型コロナウイルス」のような感染症の特徴だと、理解する必要があるだろう。

言い換えれば「新型コロナウイルス」の感染拡大の問題は、「経済の問題」でもあるのだ。
そのような社会的背景があることから、富豪たちの声明となったのだろう。
ただ美談として終わらせるのではなく、「富の継承」と同じように「貧困」もまた世代を超え続いていく、という問題は考えていく必要があるのではないだろうか?



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