今朝、FMを聞いていたら「これからのマーケティング」という、話があった。
「これからのマーケティング」というのは、「ニューロマーケティング」のことらしい。
第一生命経済研究所:ニューロマーケティング~消費者行動・感性を科学技術で理解する
「ニューロマーケティング」と聞くと、なんだか新しいことのように思われるのだが、10年以上前、木村拓哉さん主演のドラマ「MR. BRAIN」で「脳科学」という分野が注目されたことから、一気に「脳科学をビジネスに使えないか」という、考えが始まったような印象がある。
「ニューロ=脳科学」と、勘違いされると困るので、一応説明すると「ニューロン=脳の神経細胞」のことで、シナプスという脳の接合部分によって「脳神経細胞のネットワーク」ができる。
おそらく、高校の生物の授業でこの内容は勉強したのでは?と記憶している。
その「ニューロン」と「マーケティング」が合わさって、つくられた合成語が「ニューロマーケティング」ということになる。
「ニューロマーケティング=脳科学を使ったマーケティング」ということなのだ。
日本語では「脳で理解、胸で納得、腹で腑に落ちる」と言われている。
人の行動には、この3つの「理解・納得・腑に落ちる」に影響されているという話は、マーケティングだけではなく営業に携わる人も、聞いたことがあるのでは?
そして「脳科学を使ったマーケティング」の中で、重要視すべきと考えられているのが「腑に落ちる」という状態になった時の人の行動・思考なのだ。
「腑に落ちた」という状態は、潜在的意識の中から起きる行動、とも考えられるため、一般的な市場調査の手法である「アンケート」等では、調べきれない部分の意識を知ることができる。
もちろん、先入観などを持たない為に行われる「ブラインドテスト(=目隠しテスト)」と呼ばれる、調査もある。
ただ「ブラインドテスト」は、商品などに対する「比較テスト」なので、比較対象ができない「思考や感性」を推しはかることができない。
そのような部分をカバーできるものとして「脳科学」を使ったものが、今後必要だろうということで、「ニューロマーケティング」が注目され始めている、ということなのだ。
しかし、どれだけ有効なのか?という点で、疑問がある。
というのも、番組のMCをされていた方は、「いくらテストとわかっていても、電極のついた帽子のようなものを被り、自分の心の内を知らない人に知られることは、とても抵抗感があるし、個人的には嫌だ」と、話されていたからだ。
その言葉を聞いた時「そもそも、人は商品購入の時どんな選択をするのか?」ということは、選択をする寸前まで本人にもわからないのでは?という、気がしたからだ。
「衝動買い」というのではなく、スーパーの買い物で購入する商品を選ぶ時は、比較的直観的な商品選択をしているのでは?と、自分自身のことも含め感じているからだ。
むしろ「ニューロマーケティング」という言葉に踊らされ、「人の心が分かるマーケティングを科学的に行うべき」という考えばかりが先走ることを懸念している。
日本のマーケティングの第一人者の一人である、故村田昭治慶應義塾大学名誉教授は「商売は、(心)あたたかいものでなくてはならない」と、ご自身のエッセイで書かれていた。
脳科学に頼るよりも先に、ビジネスに関わる人達が「自分も生活者の一人である」という自覚を持って、「生活者に寄り添うためには、何をどうすべきなのか?」ということを、考え抜くコトの方が大切な気がするのだ。