日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

日野原重明さんの訃報で思うこと

2017-07-18 19:27:59 | 徒然

聖路加病院の名誉院長を務められていた、日野原重明さんが亡くなられた。
最期は、ご自宅で延命治療を拒否されての、穏やかな亡くなられ方だったという。

ご存じのように日野原さんは、自宅で治療に専念されるまで医師として現役を貫いてこられた方だ。
まさに「生涯現役」を貫かれた、と言っても良いと思う。
しかし、多くの人が日野原さんのような最期の時を迎えられるわけではない。
むしろ、稀なケースなのではないだろうか?

今、自宅で家族に見守られながら亡くなる方よりも、病院や老人介護施設で亡くなられる方のほうが多いと言われている。
2025年以降は「亡くなる場所難民」が出てくるのでは?という懸念がある、という話を以前聞いたことがある。
理由は、厚労省が進めている「病院の役割の見直し」だ。
今現在、「高度急性期病院」と呼ばれる高度な治療ができる病院と、「一般急性期病院」、「亜急性期」、「長期療養型」などに、病院の機能と規模に合わせた見直しを進めている。
yomiDr.:病床の役割見直し

大学病院や旧国立病院(現在の国立医療センター)などは「高度急性期病院」に含まれるため、高度な治療を必要とする患者さんや急患が治療の対象となる。
それだけではなく、「入院期間の短縮」ということも進められている。
ここ10年くらいの間で、入院をされた方なら実感されていると思うのだが、手術後比較的早い時期から「自分で動くように」という指示が、担当医からされる。
もちろん、目的は「機能回復」だが、「機能回復」を早めることで入院期間を短縮させる、というメリットもある。
厚労省が目的としているのは、どちらかと言えば「機能回復」というよりも、「入院期間の短縮」ではないか?という、指摘がされているという話もある。

それだけではなく、病院の規模や役割を見直すことで、集中しがちな「大きな病院」への診察を減らす目的もある。
それが「かかりつけ医からの紹介状が無ければ、初診とは別に料金を支払ってもらう」という制度だ。
このような病院の役割を見直すことで問題になってくる、と言われているのが「介護を必要としている人たち受け入れ」だ。
今でも「特養」と呼ばれる「老人介護施設」は、順番待ちの状態が続いている。
「介護が必要となった高齢者のケアが、自宅では十分に行えない為に、施設にお願いしたい」という、人たちが増えているのだ。

それだけではない、昨日エントリした通り「高齢の独身世帯(いわゆる「独居老人」)」も増えつつある。
「独居老人」の場合、自宅でケアをしてくれる家族そのものがいない為、どうしても施設でのケアが必要となってくる。
その施設そのものが足りない、ということでもあるのだ。
厚労省としては、在宅医療の充実でこの問題を解決しようとしているようだが、急激に増える(であろう)独居老人の在宅医療の充実は、とても厳しいのではないか?と、感じている。

「病院の機能見直し」だけではなく、もう一つ問題となってくるのは「延命治療」についてだ。
多くの人は、「自分は、延命治療を受けたくない」と思っている。
しかし、家族、特に親がそのような状況になった場合、「延命治療を受けさせたい」と考えている、と言われている。
日本人の死生観というよりも「十分な治療を受けさせた」という、一種の達成感というか満足感のようなものを得たいのでは?という指摘もあるし、「親戚の手前」という建前による判断ということも言われている。
そのような「しがらみ」が、病の床にいる当人の気持ちや考えよりも、優先される傾向にあるのも事実だろう。

日野原さんのような「自宅での看取り」の為には、看取られる本人だけではなく、親戚を含む家族の共通理解が必要になってくる。そして厚労省もそれを求め始めている、ということを知る必要があるのでは?と、日野原さんの訃報を聞き、考えてしまったのだった。