日々是マーケティング

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「ワタミ」の過労自殺裁判に思うこと

2015-12-09 11:19:50 | ビジネス

居酒屋チェーン「和民」を運営している、ワタミグループに勤めていた新人女性が過労自殺をした裁判で、昨日和解した。
和解金額が、このような「過労自殺」による和解支払い金額としては、異例と思われる1億を超す金額だった。

今回の「ワタミ」のような、若い人たちの過労自殺による労災裁判で注目されるのは、その創業者の強烈な?経営方針だ。
「ワタミ」の創業者である、渡邉美樹さんは様々なメディアを通して「ご自身の成功談」を話していた。話すだけではなく、著書もある。
このような経営者に共通している点は、「寝食を忘れるほど、働いた」ということだと思う。

自分が起業し、大きな目標をもって突き進んでいる時は、「寝食を忘れるほど、働く」ということに抵抗感はないと思う。
なぜなら「自分の目標」が明確にあるからだ。その「目標達成のためには、寝食を忘れるほど働く」コトが必要だと、自身が納得しているので、そのような働き方をするコトに抵抗はないはずだ。
問題は、そのような考えでは「経営」はできない、という点だろう。

自分ひとりで孤軍奮闘しながら、事業を「経営」している、という方はたくさんいらっしゃるはずだが、今回の「ワタミ」のように、起業から企業になったとき、その「経営」には求められるコトが違うはずだ。
その視点を欠いた時、「ブラック企業」となってしまうのではないだろうか?

その「ブラック企業」と呼ばれる企業の多くが、いわゆる「サービス業」に集中している。
ご存じのとおり「ワタミ」も、以前に「ブラック企業大賞」という、喜ばしくない賞を受賞している。
では何故、サービス業に「ブラック企業」が集中しやすいのだろうか?
その一つは「サービス業」に対する事業者も利用者も、どこか「サービス」という意味を、はき違えているからではないだろうか?

「サービス」というと、何を思い浮かべるだろうか?
「商品か何かのオマケ」のような、無償提供されるモノだと思っていないだろうか?
今回の「ワタミ」にしてもそうだが、そのお店に行ってメニューを見たとき、その価格に「提供される料理+利益」の「利益」の中にサービスを提供する人の賃金などが含まれているとは、考えないと思う。
「薄利多売」に陥りやすいサービス業は、どうしても「ブラック企業化」しやすい状況にある、というのがわかると思う。

一方、今問題になっている「保育士や介護職」などは、違う問題を含んでいる。
それは「働く人の仕事に対する思いとか志」を、「当たり前」として見ている部分があるのでは?という気がするからだ。
「保育士、介護職」というのは、国家資格を必要とする仕事なのだが、「子守や家族がやっている介護の肩代わり」という意識で見られている部分が、たぶんにあると思う。
それが、職務に対する責任や労働力に対して正当な評価対価として、支払われないということにつながっているのではないだろうか。

そのような視点で、様々な業種を見てみると「ブラック化」しやすい企業は数多くあり、企業規模にかかわらずそのような「リスク」を持っている、ということを知る必要があると思う。
それは企業だけの問題ではなく、社会的問題でもあり、日本経済にマイナスを及ぼすという点も含めて、考えなくてはいけないと思う。