昨日、時事通信が「イオン銀行が、邦銀で初めて指紋認証のできるATMを実証試験として導入する」という、記事を掲載していた。
NHKでも、同様のニュースを流していたようなので、ご覧になられた方も多いかもしれない。
NHKニュース:指紋認証だけでATMの利用可能に イオン銀行
このニュースを聞いたとき、イオンが金融業界に揺さぶりをかけてきたように感じたコトと、発想が従来の銀行とは違う目線だな、という気がした。
ご存じのように、イオン銀行そのものは流通最大手のイオンが運営している銀行だが、市中に普通の銀行のように支店を設けているわけではない。いわゆる「ネット銀行」だ。もちろん、一部のイオンモールなどには「イオン銀行支店」があるようだが、基本的には「ネット銀行」だと考えるほうが良いだろう。
しかし、案外「イオン銀行」のATMを利用されている方は、多いのではないだろうか?
というのも名古屋の地下鉄など周辺には、「イオン銀行ATM」が設置されている所が多いからだ。
地下鉄を利用していると、案外この「イオン銀行ATM」を、利用されている方の姿を見かけるからだ。
その理由は、ATM利用提携銀行の数が多いコト。
東京三菱UFJ銀行などは、利用手数料が無料だ。
地下鉄駅周辺に設置されているのは、名古屋だけかもしれないが「ATM利用提携銀行」の数が多いというのは、利用者にとって便利であるコトには変わりないだろう。
そんな利便性を重視して、ATMを各所に設置している「イオン銀行」が、指紋認証によって利用できるようにする、というのは利用者側にとって、様々なメリットが考えられる。
一番のメリットは、記事にもある通り「災害時にお金を引き出しやすくなる」という点だろう。
東日本大震災をはじめ、今年の夏鬼怒川の堤防決壊などの自然災害(一部人災もあるとは思うが)により、着の身着のまま避難をしなくてはならない、ということがある。
と同時に、銀行そのもののが業務停止という状況に追い込まれるコトもある。
そのような場合、いくら銀行にお金を預け入れていてもいざという時に引き出すことができない、ということが起きてくる。
東日本大震災を教訓として、大垣共立銀行などはいち早く「指紋認証によるATM利用」ということを始めた(大垣共立銀行の場合、この「指紋認証ATM」のほかに「災害時車両を利用した移動ATMサービス」実施も発表)のだが、地方銀行ということもありこの東海圏では話題になることはあっても、全国的な話題になるコトはなかった(ように思う)。
もう一つのメリットは、「オレオレ詐欺」のような犯罪防止という点でも、「指紋認証」は役立つかもしれない。
というのも、口座開設時に指紋登録をする必要があるため、「出し子」と呼ばれるようなキャッシュカード1枚でお金を引き出すコトそのものが、難しくなるからだ。
口座開設時に指紋認証登録をし、その指紋を使ってATMからお金を引き出すというのは、リスクの高い犯罪だと思う。いくら使い走りの「出し子」であっても、そのようなリスクを負うだろうか?
このようなメリットを、提携銀行に強く言うことでイオン銀行が銀行のシステムそのものを変えていくコトが、できるかもしれない・・・と思ったのだ。
もちろん、今の指紋認証システムがどれほど高い精度を持っているのか?という点は不明だが、「新しい(社会)システムを創っていく」という、第一歩として考えれば、大きな一歩だと思う。
流通最大手が仕掛ける、新しい金融システム。果たしてどれだけの利用提携銀行が動くのだろうか?
そして、流通が銀行を飲み込むということが起きるのだろうか?
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