日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

コンプレックスと「らしさ」

2011-08-30 21:06:23 | ビジネス
お盆休み中、みうらじゅんさんの「マイ仏教」を読んだ。

ビジネスの場で宗教の話をする、というのはご法度なのだが、そのエッセンスを頂き、発想に結びつけるというコトは問題ないのかな?と思いエントリさせていただく。

本の内容については、実際興味のある方は読んでいただければと思っているので、ここでは詳しく述べるつもりは無い。
ただ、その中でとても興味深い内容があった。
それは「自分なくし」と「コンプレックス」というコトだ。

数年前、サッカー日本代表だった中田英寿さんが「自分探しの旅」に出られた。
今でも「自分探しの旅」が続いているのかは知らないが、この「自分探し」というコトは、何も中田さんだけではなく、多くの若者(だけとは限らないようだが)が口にし、放浪の旅(というほどでは無いが)に出かけている。
若者といっても中には30代の方も珍しくは無い、という話を聞いたことがある。
そんな中、みうらさんは「自分探しではなく、自分なくしをすべきだ」と、書いている。
「自分とは何か?」といくら問いてみても、見つかるものでは無い。
なぜなら、自分自身もまた常に変化していくモノだから、というのがみうらさんの考えのようだ。

常に社会は変化しつづけているし、その社会を創っているのが、人なのだから人もまた常に変化している、というコトになるのだろう。
むしろ、自分を無くすことで、その変化を敏感に感じ取れるようになるかもしれない。
そのための方法として、みうらさんは「自分が憧れるモノになる。ただ、憧れるモノになりきれない=コンプレックスがあり、それが「らしさ」になるのでは?という内容のコトを書いている。

この一文を読んだ時私の頭に浮かんだことは、先日退任の発表をしたS・ジョブス氏のコトだった。
ジョブス氏といえば、アップルのCEOというよりも「アップルそのもの」という印象がある。
そのアップルの大ヒット商品というか、アップル起死回生の商品となったのが「i-Pod」だった。

今では「i-Pod」が、携帯音楽プレーヤーのスタンダードとなっているが、20年前までは、ソニーの「ウォークマン」だった。
そしてジョブス氏は「ソニー」に、一種の憧れというか目標としていたのではないだろうか?と、思ったのだった。
残念ながら、アップルはソニーのような大きな企業ではなかった。
それがジョブス氏=アップルにとっては、ある種の「コンプレックス」となり「アップルができるウォークマン」という発想へと発展したのでは?と、思ったのだった。
もっともジョブス氏自身は、「ウォークマン」に対して批判的な発言をしているようだが。

それだけではなく、戦後日本の多くの企業が欧米のライフスタイルや製品に対して「憧れ」と同時に「コンプレックス」のようなモノを抱き、それが「らしさ」となったのではないだろうか?
その様に考えると、自分を探すのではなく自分をなくすコトで見える「らしさ」があるのかもしれない・・・と、思ったのだった。