はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

ツノ銀中飛車

2007年12月12日 | しょうぎ
 中学の冬のある日、朝日新聞のスポーツ欄を眺めていました。その下に、将棋欄と碁の欄がありまして、それまで、何も気にしていなかったそれが、気になってきました。図面を見ながら、
 「これは、自分らが指している将棋と同じなのか?」
と考えました。
 その図は、A級順位戦、米長邦夫と内藤国雄の対局で、もちろん、まだどちらも知らない人。それは居飛車対振飛車の持久戦だったのですが、そんな知識もまだありません。「この記号はなんだろう?」 さらに僕の目を惹いたのは、その「玉」の位置と陣形でした。中央にある「玉」が端っこに…。それを見て「ピン」ときた!
 「ははあ、将棋にも『戦術』があるんだな!」
 あたりまえなんだけどね。でも、それまでそんな事考えてもみなかったのだ。闘う前にあらかじめ「玉」を安全な位置に移動させておくなんて…。僕はその時、プロの将棋という「新しい世界」への入り口に立っていたのでした。
 将棋の『戦術』を知りたくなった僕は、本屋へ行きました。僕の町には本屋が1軒しかないのですが、その町に唯1軒の本屋には、将棋の本が1冊だけありました。それは、松田茂行九段の本で、1000円位だったと思います。ちょっと高かったけど買いました。その本には「ツノ銀中飛車」が解説されていました。松田茂行九段(今は故人)はこの戦法が得意で、「ムチャ茂」と呼ばれていると書いてある…。(松田さんはここにも登場→「ヒゲの九段の…」

 「ツノ銀中飛車」は美しい。

 その頃は中飛車といえば、こういう形をいいました。特徴は、全体的にスキがないことです。たとえば角交換になったとき、相手はその「角」を打ち込む場所がない。だから、相手が攻めて来たとたん、反撃すると効果的です。
 ところが最近は指す人が(プロでは)少なくなってきています。なぜか。強敵が現われたからです。強敵とは、「居飛車穴熊」。ただ、定跡書をみても「居飛車穴熊」を相手にしても理論的には互角に戦えるようなのです。けれども、穴グマは堅いので、結局、実戦では負けやすいのだ。
 藤井猛九段は、プロになる前、奨励会の対局では、中飛車を得意としていたそうです。それでプロになったとき、将来性を考えて「四間飛車」を研究し始めたというんですね。ということは、すでにその時(1991年)、中飛車の将来はアブナくなっていたということか。その頃は、居飛車穴熊のために、四間飛車も衰亡の危機にあったのですが、藤井さんを始めとする「四間飛車党」が勢いを復活させました。
 そういう流れから、今は同じ中飛車でも、より攻撃的な「ゴキゲン中飛車」が主流になってきています。「ツノ銀」はオールドタイプの味わいです。
 「ツノ銀中飛車」を指す棋士といえば、今は、里見香奈でしょうか。ただ彼女もこの頃はゴキゲンを多用していますね。


竜王戦第6局1日目、型にはまらない面白い形になっています。(型にはまらない将棋を「力戦形」とよびます。) 相中飛車!

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