はんどろやノート

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エンリコ・フェルミと“弱い力”

2010年06月12日 | らくがき
 シカゴではフェルミに会いました。イタリー人らしくあまり大きくなく、色のあさ黒いおじさんで、話は奇智にとんだ面白いことを言っては楽しげにあかるく笑う人です。
   (中略)
 … そして言うにはどうも素粒子が増えてこまるから、これからノーベル賞は新粒子を発見したものにはやらないほうがいい、こういう調子で奇智にとんだ話をあとからあとからする人です。彼のいうには現在理論物理学者はあまり皆同じ考え方をしすぎる。この言葉は如何にもフェルミらしいと思いました。皆さんの考えはどうですか。

   (アメリカの朝永振一郎から木庭二郎への手紙 1949年)


 「ベータ崩壊」とは、放射性物質が「ベータ線」を放出して、元素変換する現象である。
 そのベータ線の正体はどうやら‘電子’であった。それはわかったが、判らなかったのはその‘電子’の出所である。いったい‘電子’はどこから出てくるのか?

 私たちは、原子核の周りを「電子」がとりまいていることを学校で習って知っている。これはアーネスト・ラザフォードが提案した原子モデル(ラザフォードの原子模型)がその発想の出発点であるが、しかし、「ベータ線」の‘電子’は、原子核の周囲を囲むその「電子」が外へと放出されるものではない。それは、“イオン化”というおなじみの現象にすぎない。
 「ベータ線」の‘電子’は、それとは別の‘電子’なのだ。

 では、その‘電子’はいったい何処からくるのか? おそらく「原子核」の中からだろう…。それしか考えられない。
 だから学者たちは、「原子核」の内部にもやはり‘電子’はあるのだと思っていた。そう考えるのが自然だろう。それが常識だったのだ。 …1934年までは。



 ところが、エンリコ・フェルミのベータ崩壊理論が、その常識を変えたのだった。

 「原子核」の内部には‘電子’はない。ないところから‘電子’が飛び出してくる、とフェルミ理論はいうのだ!!
 そんな考え、ありなのか? フェルミの魔法のたねは、“弱い力”だった。 彼は、核の内に、電磁気力の10のマイナス13乗ほどの大きさの力――たいへんに“弱い力”を設定した。 そして――
 「ベータ線」の‘電子’は、核内の「中性子」が、その“弱い力”の働きによって、「陽子」と‘電子’と、それから「ニュートリノ」とに“変身”することで生まれるのだ、と。

 “弱い力”という魔法―――が、核の中にはあるのだと。

    「中性子」  →   「陽子」 + ‘電子’(ベータ粒子) + 「ニュートリノ」 

 (こんなブッ飛んだ論文を科学論文雑誌『ネイチャー』が掲載拒否したのは、むしろ当然かもしれない。)




 現在の物理学はこう詠う。 世の中には4つの力があると。

 重力、電磁気力、強い力、弱い力 … この4つである。

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