中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

幸福への意志

2011年01月18日 | 
 先日、アルゼンチンタンゴのダンス選手権をテレビを見た(以前、社交ダンスを習っていたので、この種の番組はつい見てしまう)

 あるカップルが、自分たちのダンスは「純愛」を表現したものだ、と言って踊った。草食系日本人には、それは「エロス」の行為そのものに見えた。「これで純愛かあ、かなわないな」という気分になる。「純愛」の意味するところが違うのだ。

 ツヴァイクは『マリー・アントワネット』で、フェルゼンと王妃の関係について、わざわざ一章をさき(「彼はそうだったのか、そうでなかったのかーー幕間の問い」)、ベッドインしたかしなかったかを論考している。恋愛がほんものであるためには、身も心も一体になることが必要だとするのだ。

 『恐怖と愛の映画102』にも書いたが、これに関してはトーマス・マンの短編『幸福への意志』が思い出される。

 余命いくばくもなしと宣告された青年が、それでも恋人と結婚しようとして周囲に阻まれる。彼は幽鬼のごとくなりながら、それでも医者の見立てより長生きし、ついに結婚は許される。初夜が明け、彼は死ぬ。しかし葬儀にあらわれた彼の一夜だけの若妻は、いかにも満ち足りた幸福そうな表情をしていた……
 
 
☆「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
 
 恐怖と愛の映画102 (文春文庫)

☆最新刊「残酷な王と悲しみの王妃」(集英社) 2刷になりました♪
 レンザブローで本書についてインタビューが載っています。お読みくださいね!⇒ http://renzaburo.jp/

残酷な王と悲しみの王妃

 
☆「『怖い絵』で人間を読む 」(NHK出版生活人新書) 7刷になりました♪

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

☆光文社新書「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」3刷中。

名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書 463) 


☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書)14刷中。

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

☆「怖い絵」16刷中。

怖い絵

☆「怖い絵2」、9刷中。

怖い絵2

☆「怖い絵3」 6刷中。

怖い絵3


☆「危険な世界史」(角川書店) 5刷中。
危険な世界史


「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫)
おとなのための「オペラ」入門 (講談社プラスアルファ文庫)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版です。

歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする