中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

王妃はつらいよ(「世界史レッスン」第111回)

2008年05月13日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」、第111回目の今日は、「王妃は娼婦に憧れた?」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/05/post_e71f.html#more
 ルイ15世妃マリ・レチンスカの退屈な日々について書きました。

 夫に全く顧みられないということでいえば、先代ルイ14世妃マリー・テレーズも全く同じで、彼女はココアに情熱を注いでいたのだった。それについては「ココアだけでは癒されず」もお読みください。⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/01/post_e813.html

 では夫に大事にされればいいのかというと、次の代ルイ16世妃マリー・アントワネットを見れば、そうとは限らないのがわかる。16世がさっぱり魅力的でなかった、ということとは別に、何か事が起こったとき、憤懣が王や王妃へ直接ゆかず、寵姫へと向かう構造(政治的にも心理的にも)になっているからだ。

 フランス王の「寵姫」というのは、愛妾たちの中から選ばれたたったひとりの女性で、特別行事をのぞいては、宮廷内の華やかな部分を一手に引き受けた「陰の」というよりむしろ「表の」もうひとりの王妃であった。15世の寵姫ポンパドゥール夫人に至っては、王の代わりに政務までこなしていた(おかげで過労死してしまった)。

 ということは逆に言えば、政治の失策や国庫の赤字は、全てこれ「寵姫が政策に口を出したからだ」「寵姫が贅沢三昧しているからだ」ということになり、憎悪も一手に引き受けるということだ。おかげで14世の妃も15世の妃も、誰からも何の批難も受けなかった。

 一方、16世は生涯寵姫を持たなかった。アントワネット一筋だったわけで(もともと女性にさほど興味がなかったのではないだろうか)、そうなると彼女は寵姫が受けるはずの批難や憎悪までも浴びることになる。

 というわけで、いずれにしても王妃はつらいんである。

☆☆NHKのBSテレビで放送している「週刊ブックレビュー」はご存知でしょうか?(わたしも以前何度か出演したことがあります)
今週末5月17日(土)の朝8時半から、及び再放送で5月18日(日)夜23時45分からの放送で、井上章一氏が「怖い絵2」の紹介をしてくださるそうです(楽しみ♪)⇒ http://www.nhk.or.jp/book/prog/index.html。ぜひごらんください。

☆☆「怖い絵2」。4日(日)の日経新聞で紹介されました♪
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中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


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マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)




 

 
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