中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

ゲリラとナポレオン

2015年06月16日 | 音楽&美術
 昨日はスカパーTV「5感で旅する世界の美術館」収録でした。今回はマドリッドのプラド美術館篇で、ゴヤの回。

 反戦絵画の傑作『1808年5月3日プリンシペ・ピオの丘での銃殺』についてですが……と、ここまで書いてきてまたむらむらと腹が立ってきたのはこのタイトル! 古い美術書を見ればお分かりと思いますが、かつてこれは「マドリッド、1808」とか「プリンシペ・ピオの銃殺」とか短くて覚えやすいものでした。ところが誰が付けるのか(もちろんエリート意識に凝り固まった美術関係者たちです!!)素人が覚えられないように?、年々長く長く長~くなってゆくのです。もはやタイトルではなく「火曜サスペンス劇場」みたいな説明文みたいなへんてこなものに!!

 いかん、いかん。苛立って本題を忘れるところでした。この件については以前も「笑うコサック」が「トルコのスルタンへ手紙を書くサボロージャのコサック」に。「グランドジャット島」が「グランドジャット島の日曜日の午後」に悪改題されたときにも書きましたが(と、もう一度腹を立てる)

 もとへもどします。

 つまりせっかくのゴヤの傑作なのに、タイトルが無意味に長いためTV収録のときタイトルを言っているうち肝心の解説を一つ忘れてしまったのでした。それがゲリラについてです。

 ゲリラという言葉はベトナム語でもイスラム圏の言葉でもなく、スペイン語。「戦争=guerra」の短縮形「小さな戦争=guerrilla」で、発端はゴヤの時代の、この対ナポレオン抵抗運動でした。なにしろフランス軍23万に向かったスペイン軍1万5千。ゲリラ戦でなければ勝ち目はない。ロボットのようなフランス軍に次々に殺されてゆくゴヤの絵の無数のヒーローの中には、ゲリラもいたのです。


☆来週は旅行のため当ブログはお休みです。7月1日にまた!


☆☆☆今後の講演予定

・7月25日(土)朝日カルチャー千葉 15時半~17時「新 怖い絵」

・9月5日(土)中日新聞社・栄中日文化センター50周年記念 名古屋 14時~15時半

・10月27日(火)広島美術館メープルサロン(関係者のみ)


☆最新刊「愛と裏切りの作曲家たち 」(光文社知恵の森文庫)

愛と裏切りの作曲家たち


☆「マンガ西洋美術史03」(美術出版)

マンガ西洋美術史03 「市民社会」を描いた画家」 ブリューゲル、フェルメール、ホガース、ミレー、ゴッホ



☆「マンガ西洋美術史02」(美術出版社)
マンガ西洋美術史02「宗教・神話」を描いた画家  ボッティチェリ、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、ティツィアーノ、エル・グレコ、ルーベンス


☆「危険な世界史 運命の女篇」(角川文庫)

危険な世界史 運命の女篇 (角川文庫)

☆「マンガ西洋美術史01」監修(美術出版社)
マンガ西洋美術史01 「宮廷」を描いた画家 ベラスケス、ヴァン・ダイク、ゴヤ、ダヴィッド、ヴィジェ=ルブラン


☆「ヴァレンヌ逃亡」(文春文庫)
ヴァレンヌ逃亡 マリー・アントワネット 運命の24時間 (文春文庫 な 58-2)


☆「名画で読み解く ロマノフ家12の物語」(光文社新書)2刷になりました♪

名画で読み解く ロマノフ家 12の物語 (光文社新書)   

☆「印象派のすべて」(宝島社別冊ムック)
印象派のすべて (別冊宝島 2200)

☆「名画に見る 男のファッション」(角川書店)
名画に見る男のファッション (単行本)

☆「橋をめぐる物語」(河出書房)
中野京子が語る 橋をめぐる物語

☆「中野京子と読み解く 名画の謎 陰謀の歴史篇」(文藝春秋) 2刷になりました♪
中野京子と読み解く 名画の謎 陰謀の歴史篇

☆「残酷な王と悲しみの王妃」(集英社文庫)4刷になりました♪
残酷な王と悲しみの王妃 (集英社文庫)

☆「怖い絵」(角川文庫) 単行本に新しく書き下ろし2作を加え、全22作品です。4刷になりました♪
怖い絵  (角川文庫)

☆「はじめてのルーヴル」(集英社)2刷になりました♪
はじめてのルーヴル (集英社文芸単行本)

☆「名画の謎 旧約・新約聖書篇」(文藝春秋) 4刷になりました♪
中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇

☆「怖い絵 死と乙女篇」(角川文庫) 5刷になりました♪
怖い絵  死と乙女篇 (角川文庫)

☆最新刊「名画と読む/イエス・キリストの物語」(大和書房) 3刷になりました♪
名画と読むイエス・キリストの物語

☆「危険な世界史 運命の女篇」(角川書店) 2刷中。
危険な世界史 運命の女篇

☆「危険な世界史 血族結婚篇」(角川文庫)6刷になりました♪
危険な世界史 血族結婚篇 (角川文庫)

☆「怖い絵 泣く女篇」(角川文庫)~「怖い絵2」の文庫化~ 11刷になりました
怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)

☆『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(文藝春秋) 6刷になりました♪
中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇


☆「印象派で「近代」を読む ~光のモネからゴッホの闇へ~」(NHK新書)3刷になりました♪
印象派で「近代」を読む―光のモネから、ゴッホの闇へ (NHK出版新書 350)

☆「『怖い絵』で人間を読む 」(NHK出版生活人新書) 10刷になりました♪
「怖い絵」で人間を読む 生活人新書


☆光文社新書「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」 6刷になりました♪
名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書)

☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書) 18刷になりました♪
名画で読み解く ロマノフ家 12の物語 (光文社新書)

☆「芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫)
芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫)

☆「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫) 2刷になりました♪
おとなのための「オペラ」入門 (講談社+α文庫)

☆「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
恐怖と愛の映画102 (文春文庫)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版です。
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☆以下の単行本は絶版としました。文庫本をお求めくださいまし~

☆「怖い絵」16刷中。怖い絵

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6 コメント

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ゲリラ (carpediem)
2015-06-17 18:33:57
ゲリラがスペイン語だったとは…スペイン語でllaの発音はリャ又はジャ。スペイン人の耳にはリャという音とジャという音は同じに聞こえるとのこと。このことにはビックリしましたが、スペイン人に「日本人はRの発音とLの発音はどちらもラリルレロなのよ」というと「信じられない!」と言います。Rの発音は巻き舌をするのでLの発音とは明らかに彼らにとっては違うのでスペイン人が驚くのも分かります。民族によって耳まで違うのかと思いました。
その為、guerrillaはゲリーリャ又はゲリージャという発音となり、まさか日本でいうゲリラとは思いませんでしたが、日本では、セビリア、パエリア、リヤドロなどは、スペインではセビーリャ又はセビージャ、パエーリャ又はパエージャ、リャドロ又はジャドロとなり、そう言わないとスペイン人は分かってくれないのと一緒ですね…
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Unknown (carpediemさん(kyoko))
2015-06-18 17:24:57
 ジャとリャが区別つかないなんて、日本人の耳にはとても不思議ですよね~
 そういう我々現代人はもう誰も鼻濁音を発音できなくなっているわけで。。。それどころか、50年後くらいには英語の国になっているかも。嫌だなあ。。。(もう生きていないとはいえ)

 
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klee (pascin)
2015-06-19 15:09:05
 クレーの中で特に大好きな絵に『花ひらく木をめぐる抽象』と少し長いタイトルがついていますが、よく似た絵には『いにしえの響き』とあります。
私にはどちらもその作品にピッタリ(長さも)と、絵と同じくらい印象に残っています!
この絵たちは180度?回転したり似たようなのがたくさんあり、きっとお気に入りのモチーフではと想像しています。。
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Unknown (pascinさん(kyoko))
2015-06-21 11:31:43
 どちらも「魔方陣絵画」の一つなので似てくるのでしょうね。音楽的だし。
 もしかしてpascinさんも色に音楽を感じるタイプ?
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ゴヤの目 (攻城のマルパス)
2015-06-24 21:08:58
 ご無沙汰しております。

 ゴヤの絵のかたがたはゲリラだったんですね! はじめてしりました。武器とかもってないんで、本当に無抵抗の民衆かと思いました。裏事情を知ると恐ろしいです。

 ゴヤの作品は、写真のように敵も味方もないですよね。版画集でも、ゲリラ(民衆?)によって惨殺されたナポレオン軍の兵士の版画もありますし、逆もしかり(むしろナポレオン軍の残虐さを喧伝するためにこっちが有名ですよね)。
 ゴヤの作品は妥協しないんで、すごい観ていてつかれます。

 にしても、テレビであえてそこらへんの事情が語られないとは…… ナポレオン軍は侵略軍なので言い訳できないけど、どさくさにまぎれて、スペインで戦ったイギリス軍、ポルトガル軍も略奪してるんだから、本当に戦争と、軍隊というものが猛毒なものだということを再認識します。
 
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Unknown (攻城のマルパスさん(kyoko))
2015-06-30 09:47:41
 あ、不正確な書き方ですみません。「ゲリラもいました」と書くべきでした。全部がゲリラではなく、当時の記録によれば単に仕事帰りで鑿を持っていただけなのに武器所有として処刑された人もいましたから。
 というわけで、いまさらながら本文ちょっと書き換えました!
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