中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

「キャプテン・フィリップス」~ソマリアの海賊

2013年12月10日 | 映画
 ポール・グリーングラス監督「キャプテン・フィリップス」を見てきた。
 この監督のは「ユナイテッド93」でそうとうなストレスを受けたので、覚悟していたが、いやはや、それ以上。序盤からラストまで緊張の糸のゆるむ間もない。

 ソマリアの海賊に関しては、以前ドイツで逮捕された海賊の中に未成年がいたため、今後はドイツで教育を受けられるというようなニュースを読んでいたが、実態はあまりよく知らなかった。何しろはるか遠くの海上での出来事。

 そして海賊といえば「宝島」のジョン・シルバー、「ピーターパン」のフック船長、「ひょっこりひょうたん島」のトラヒゲ、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のキャプテン・スワロウ。。。どれもファッションがきまっている。

 国家がらみの海賊なら、エリザベス一世直々に許可状をもらっていたフランシス・ドレイク。こちらも襞襟に勲章と貴族然としていた。

 ところがソマリアの海賊はファッションなどには気をつかわない。よれよれのTシャツに短パン。武器だけは最新型だから、ある意味、黒いアイパッチに鉤型フックより怖い。

 この映画を見て一番驚いたのは、たった4人が小型ボートで近づいて、大きなコンテナ船に梯子をかけて乗り込んだこと。わたしのイメージでは、襲う側ももっと大型船で大人数かと思っていた。

 しかもコンテナ側に警備員はたったひとりで、それも臨時雇い。命をかけるほど報酬はもらっていない、と言い放つ(確かに言い分はわからぬでもないが)。けっきょく正社員たる船長と副船長らが全ての対応をせざるを得ない。

 「キャプテン・フィリップス」は、かつてのインディアン映画のように、襲う側を顔のない非人間的な存在として描かない。それによってソマリアの政治的状況、国民の絶望的状況が浮かびあがる仕掛けになっており、見応え充分。

 船長役トム・ハンクスの演技が絶賛されているがそれも納得だ。ラストなど、その迫真性にこちらまで呼吸困難になりかける。

 グローバル経済の実態を知るためにも、そしてサスペンス映画の醍醐味をあじわうためにも、ひいては日本を考えるためにも、ぜひご覧ください!


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sai






 

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