中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

小説の読者は「ヒステリカルで肉体嫌悪症」?

2008年11月04日 | 
 今週の「世界史レッスン<映画篇>」はお休みなので、三島由紀夫「小説とは何か」について。

 読まれた方も多いと思われますが、彼は小説の読者について、次のように列挙しています。

 「人生経験が不充分で、しかも人生にガツガツしている、小心臆病な、感受性過度、緊張過度の、分裂製気質の青年たち」

 「性的抑圧を理想主義に求める青年たち」

 「現実派である限りにおいて夢想的であり、夢想はすべて他人の供給に俟(ま)っている婦人層」

 「ヒステリカルで、肉体嫌悪症の、しかし甚(はなは)だ性的に鋭敏な女性たち」

 「何が何だかわからない、自分のことばかり考えている、そして本に書いてあることはみんな自分と関係あると思い込む、関係妄想の少女たち」

 「人に手紙を書くときには、自分のことを2,3ページ書いてからでなくては用件に進まない自我狂の少女たち」

 「なんとなく含み笑いを口もとに絶やさない性的不満の中年女たち」

 「結核患者。軽度の狂人。それから夥しい変態性欲者」・・・

 あはは。笑ってしまうが、我が身をかえりみて(どれかとは言いませんが)、ほんとにそのとおりだなあ、と思いました。

 で、三島は続けてこう書くのです。

 「彼らは見かけはいかにも平凡な、町のどこでも会う人たちであり、頭のよさそうな青年、美しい少女、好もしい主婦、実直な勤め人であるだろう。そして決して彼らは自分を小説につないだもっとも内的な動機については、何も語らないだろう」

 小説とは何か?

 「読者の側からすれば、自分のもっとも内密な衝動の、公然たる代表者且つ安全な管理人を得るのである。或る小説がそこに存在するおかげで、どれだけ多くの人々が告白を免れていることであろうか」


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コメント (3)
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