中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

ジェリコーとドラクロワ(世界史レッスン第54回)

2007年03月13日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第54回目の今日は、「メデュース号のスキャンダル」⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/03/1816_7dd3.html#more
名高いジェリコーの『メデュース号の筏』について書いた。この絵を見たルイ18世は不快感を隠そうとしなかったらしい。

 絵には描かれていないが、実際の筏の上には食用の人肉片が散らばり、マストにも干してあったという。ジェリコーは血のついた手斧ひとつ描くことで、それを見る者の想像にまかせた。

 「美人薄命」という言葉があるが、美男も薄命かもしれない。ジェリコーは『メデュース号の筏』を発表した5年後、33歳の若さで亡くなった。彼には有名なロマンスがあり、母方の叔父(しかも彼にとっては大恩人)の若い妻との不倫だ。子どもも生まれている。誰ひとり幸せにならなかった悲恋であった。

 ジェリコーがこのように短命で作品数が少ないため、フランスロマン主義といえば、彼より7歳年下のドラクロワに代表されてしまう。
 とはいえ面白いことにふたりは実生活でも仲が良く、『メデュース号の筏』の中央に倒れている男のモデルをしたのがドラクロワと言われている。

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☆☆ツヴァイクはルイ18世=プロヴァンス伯を、兄の王位をねらう「陰謀の黒いモグラ」との卓抜な比喩で評しています。悪い奴なんですねー、これが。
マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」





コメント (11)
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