経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

知財の役割の再定義

2009-01-25 | 知財発想法
 実体経済の急速な悪化がいよいよ顕在化し、自動車や電機メーカーなど大手企業の業績も凄いことになってきました。徒然知財時々日記さんが高機能・高価格路線か、低価格路線か、というテーマをとりあげて知財との関係を論じられていますが、実際のところ電機メーカーがマスマーケットで知財の力によって高価格路線を推し進めるのは困難であり(IBM、アップル、キヤノンなどの収益力も「高価格」というよりビジネスモデルによる部分が大きいでしょうから)、「特許で参入障壁を築く」というオーソドックスな考え方では対応できないのが現実なのでしょう。クロスライセンスの条件が有利になるとか、設計の自由度が保たれて開発コストを抑制できるとか、間接的には粗利を押し上げる様々な効果が考えられますが、特許という参入障壁によって市場をコントロールするという典型的な知財経営モデルが適用できるのは、医薬品などの分野かニッチマーケットが前提になってくるのが現実であると思います。そこで、オープンイノベーションのような新しい考え方が出てくるのでしょうが、そうした中での知財(特許)の役割を考えると、「参入障壁」より上位概念化して「有利な事業環境を形成するツール」と捉え直すことが必要になってくるのだと思います。オープンイノベーションにしても、知財を差別化要因として用いるより、相互利用による市場拡大のほうがより「有利な事業環境」に寄与するということであり(‘相互’だから知財の保有が前提になってくるわけですが)、これも「有利な事業環境を形成するためのツールの使い方の一つ」ということになるのでしょう(オープンイノベーションについては不勉強なので正確にはわかりませんが、本質的にはそういうことかと理解しています)。
 すなわち、知財というツールをどう機能させれば有利な事業環境に寄与するかというところを、個別に考えていかなければいけないということかと思います。そうすると、知財の機能を出発点に物事を考えるのではなく、事業環境や収益構造を把握することから始めて知財の適用方法を考えていくことが求められるようになる。だから、知財戦略を考えるためには、知財の知識以上にビジネスセンスが重要になってくる、って話なのではないでしょうか。やっぱり、個別の問題へのきめ細かで柔軟な対応や、常識(教科書的な知財の考え方)に囚われない姿勢が大事になってくるのだと思います。