経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

常識に囚われずにより適切な手段を探る・その2

2009-01-05 | プロフェッショナル
 昨日のエントリに関連して。
 話は飛びますが、正月番組の‘イチ流’で、イチローがまたまた興味深い話をしていました。バッティングに関する技術論なのですが、スイングの前にできるだけグリップの位置を後に残すことを意識して、手元でのボールの変化に対応しているとのこと。そうすると、バットの出が遅くなり、バットの芯に当たらず「詰まる」ことが多くなってしまうわけですが、バッティング理論の常識では「詰まる」のは避けなければならないこと。しかしながら、イチローは「詰まる」ことを頭から否定せず、手元の変化に対応できることを「可能性が広がる」と表現して、「詰まる」ことは許容できるもの(詰まってもファールしたり狙ったところにポテンヒットを落としたりすればよい)と捉えています。要は、必要なことは点をとるためにヒットを打ったりランナーを進めたりすることであって、「詰まらないこと」ではない。これまでの常識に囚われていては、本来の目的を達成するのに有効な可能性を殺してしまうことがある、ということです。
 この話を聞きながら考えていたのが、例えば、これはセミナーなんかでよく問題提起しているのですが、「回避されれば負け」というのが特許の世界の常識であるとして、事業を有利に進めるための環境を作るという本来の目的に立ち返ってみると、「回避可能な特許」であっても相手方に「回避するための負担」をかけられれば事業環境にプラスに働くこともある、ということ。外国での模倣品対策、特に権利行使にかかるコストを中小企業がどう吸収していくかという問題に対して、先日ある社長が仰っていた、「そんなの自分でできるわけないから、早く現地での有力なパートナーを見つけてパートナーにやってもらえばいいじゃないですか。パートナーと組むために必要なコア特許だけはしっかり押さえておいて(注;模倣品対策に悩むくらいの有力な製品なら販売パートナーを見つけることは可能なはずという前提です)。」という発想。知財活動は、まだまだその「可能性を広げる」ことができるのではないかと思います。

※ 今回の写真(薬師寺の東塔ですが)も本文とは関係ありません。