経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

実験やってみぃ。

2011-05-05 | 書籍を読む
 最近読んだ本から。いろいろ考えるところがあって最近新書を読み漁っています。

 1冊目は母校(高校)の英雄・山中先生と、あのノーベル物理学賞の益川先生との対談録「『大発見』の思考法」。研究がテーマでありながら、お二人の語りにはビジネスの世界にも通じることが多く、大変興味深いものがありました。例えば、こんなくだり。
<益川先生> ・・・仮説を立て、実験し、結果が予想通りだったら「並」、予想しないことが起こったほうが、科学者としては当然、面白い。そこで大事なのは「この予想外の結果は、いったい何なのだろう」と考えることです。・・・
<山中先生> 私はよく、学生に向かって、「ごちゃごちゃ考えんと、実験やってみぃ」と言うんです。・・・困ったら、とりあえず実験をやってみる。そうすると、また何か違う現象が出てきて、それがヒントになることがよくあります。・・・
 排他権である知財権を獲得したら独占的地位が得られるだろうという理屈に対して、その通りになっている事例よりも、そうはなっていない事実を「いったい何なのだろう」と考えてみることのほうが、実は面白い。クライアントの知的財産で「実験」というのはちょっと困りますが、理屈の世界だけでなく、実際に起こっている現象をヒントにして次なる手立てを考えていく、求められるプロセスはビジネスの世界とも共通するようです。
 もう一つ、益川先生のお話からですが、物理学の理論と実験のうち日本は実験物理が圧倒的に強い。本来科学というのは、個人プレー、狩猟民族向きであるが、大人数で力を合わせることが求められる実験物理は日本人向きで、世界のトップにあると。今回の震災への対応(国会を除く)や昨年のサッカーワールドカップでも、日本人の強みは‘団結力’であると思い知らされましたが、研究の世界でも同じことが言えるようです。では、知財の仕事と‘団結力’をどう結び付ければよいのか。これも「いったい何なのだろう」と考えていくことにしましょう(「ごちゃごちゃ考えんと」実験やったほうがいいのでしょうか)。

 2冊目は、財部誠一氏の「アジアビジネスで成功する25の視点」。短編のレポートを編集したものなのでやや深みに欠ける印象はありましたが、こんな話が印象に残りました。
 台湾の製造業がどうして強いのか。その強みは、大規模な投資(中国本土に大規模な製造拠点をどんどん作っている)を可能にする資金調達力にある。その資金調達の場となっているのが新興市場で、投資好きの国民性がその新興市場の活気を支えている。
 知財の仕事をしていると、アジアというと技術力の違いがどうだとか模倣対策がどうだとかいった方向に目が行ってしまい、こういうのはなかなか見えてこない視点です。「日本はベンチャーに資金を供給する仕組みが・・・」といった話が出ることはあってもどこか他人事で、そういう語りをする人は新興市場の株を買ったことがあるのか。余裕資金は全部郵便局に貯金してます、なんてことはないのか。これもまた国民性ということならば、‘団結力’で解決する方法を考えるしかない、ってことなのでしょうか・・・


「大発見」の思考法 (文春新書)
クリエーター情報なし
文藝春秋


アジアビジネスで成功する25の視点 (PHPビジネス新書)
財部 誠一
PHP研究所