経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

‘特許流通’における論理の飛躍

2009-04-19 | 企業経営と知的財産
 知財業界で話題(?)の週刊ダイヤモンド最新号からもう1つ。‘特許流通’に関する記事です。
 この記事の前半では、日本でいわゆる‘特許流通’が活発化しない理由を次のように展開しています。
<米国> オープンイノベーションの発想
 ⇒ 必要な技術はライセンスを受ける
<日本> 研究開発の自前主義
 ⇒ 他社特許の利用が必要な場合でもライセンスを受けず自社開発で特許を取得する
 以上のように、日本では他社特許を利用するという考え方が一般的でないので、特許流通は活性化しない。
 日本型の自前主義だと保有する特許の件数が増加せざるを得ず、日本でもオープンイノベーションの考え方が台頭しつつあるものの、まだ‘特許流通’の増加には至っていない。
 後半からは、では特許の利用を活性化させるための流通インフラはどうなってるかという話になり、特許流通促進事業や特許オークションの例があげられて、「眠れる技術にどう光を当てるか、真剣に考える時期がきている」で締めとなっています。

 で、どうも読んでてしっくりこないのですが、この記事の前半と後半はそもそも論点が異なる話なのに、‘特許流通’というつながりだけで論理が飛躍してしまっているのではないか。
 前半は、必要な他社特許があるときに企業がどういう選択をするかという問題であり、対象となる特許は特定されているわけです。つまり、オークションで特許を探してくるというような話ではない。ここで、問題特許があった場合に積極的にライセンスを受ける(特許権者もライセンスする)のが当たり前という産業構造になっていくと、特許の件数は減少、研究開発の重複や特許に抵触する云々で消耗させられる機会も減って、事業のスピードは加速していくことになりそうです。但し、基本的には特許技術による差別化が放棄されることになるので、価格やサービスなど特許以外での競争はさらに激化することになるのでしょう。政策的にどういう方向に誘導するのか、企業はどういう戦略をとるのか、どちらも産業政策・企業戦略として大きなテーマですが、後半の‘眠れる技術’云々にもっていくような話ではないと思います。

 この話に限ったことではないですが、知財に関してはキーワードのみが先行し、まだまだ論点がちゃんと整理されていないことが多いように感じます。今回の特集は面白そうなネタは盛り沢山だったのですが、改めてそのことを感じました。