経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

株式投資のツボは閲覧請求?

2009-04-14 | 知的財産と投資
 知財業界で話題(?)の週刊ダイヤモンドの最新号です。
 特許の価値を数値化した「YK値」について、「閲覧請求や無効審判で特許の価値が測れるか?」という論点について、ipippiなどで話題になっているようです。ただ、相関関係のないケースを挙げていけばキリがないでしょうから、それはそれとしておいて(この種の分析ではある程度の例外に目をつぶるのはやむを得ないことかと思います)、より興味を惹かれるのは、その先の「保有する特許の価値から企業の価値が測れるか?」という部分です。理論上「特許の価値が高いですよ」と言ったところで、経営者から見れば「で、どう業績に貢献してくれんの?」って話ですから、特許の価値の高さが企業業績・企業価値にどのように影響するのか、というのが最も重要な論点であるように思います。言い換えれば、「知財の視点」からはこの手法で特許の優劣が測れるかが論点になりますが、「経営の視点」からすると、特許の価値が企業の業績、企業の価値にどのような影響を与えるかというところが大きな関心事になってきます。
 で、そのテーマについては91ページに書かれているわけですが、いろいろ注釈はついていますが、ここでは、
「企業が保有する特許の価値と企業の時価総額は連関している」
→「特許の価値に対応する近似曲線上の理論時価総額と実際の時価総額の乖離は2年程度経過すれば修正される方向に向かう」
(∵価値のある特許に関わる製品が2年程度のうちには収益貢献して時価総額を押し上げる)
という説が提示されています。要するに、時価総額に比して特許価値が高い企業=閲覧請求や無効審判をたくさん受けている企業に投資すれば、2年後くらいには儲かる確率が高い、というすごい話です。
 企業業績に対してそこまで特許が寄与すると考えるのは何とも大胆な説という気がしますが、過去のデータからはその連関が明らかになっているとのこと。
 ただ、この連関性については、いろいろな読み方ができそうです。実際の時価総額(≒株価)というのは直近の将来収益の影響を強く受けるので、何であれ企業の標準的な姿を示す理論上の時価総額(例えば長期の収益実績や売上規模、保有資産等)と比べると、いずれはその乖離は修正されていくのが通常です(何らかの理由で大赤字を出して株価が急落した企業も、リストラ等の努力でやがては本来あるべき水準に戻っていくのが多いetc.)。とすると、この連関性の根拠は、特許の価値が時価総額の上昇に寄与する、という順序ではなく、ここで算出している特許の価値が実は企業の標準的な姿に近い数値を示す傾向にあって、時価総額はやがて本来あるべき位置に戻っていくということなのではないか。その背景には、特許に関する活動に投じるコストは、企業の業績変動に対して比較的ブレにくい傾向にあり(業績が好調だから活動が活発化する、業績が低調だから活動が鈍化する、ということが他の業務に比べると比較的起こりにくい)、企業の規模や投資余力など本質的な実力と相関性を示す傾向にあるってことであれば、何となく納得できるような気がします。