経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

意志と期待の結びつき

2009-04-02 | その他
 本日ある企業の社長から伺った話。長く経営をされて、結局その業界での決定要因となるのは‘営業力’である。「技術があるから売れる」より、「顧客があるから技術がついてくる」パターンが圧倒的に多いのが事実であるということ。‘顧客志向’というのはよく言われることではありますが、その意味を最近よく改めて考えてみたりします。

 話は変わりますが、スポーツ選手やアーティストの口からも、よく「ファンが大切」という言葉が出てきます。が、それを一流プレイヤーが口にするのと新人とでは同じ言葉でも重みが違う。‘顧客志向’も同じで、経験豊富な社長の言と若手社員の言とでは重みが違います。

 また話は変わりますが、先日のWBCを見ていて思ったこと。日本や韓国はなぜあんなに強かったのか。個々人の技量では明かに太刀打ちできないはずのアメリカやベネズエラより、なぜ日本や韓国なのか。それは言われているように、‘準備’の違いなのだと思いますが、その違いはどこから生じたか。それはたぶん、‘期待’なのではないかと思います。ファン(顧客)にどれだけ期待されているか。期待されているから準備をする。準備をするから結果が出やすくなる。そこに、結果が出るからさらに期待が高まる、という好循環が生じる。これはたぶんビジネスにも通じるところがあって、「顧客があるから技術がついてくる」というのも顧客の‘期待’を起点にした同じサイクルになっているのではないか。

 またまた話は変わりますが、以前に‘勝手知的創造サイクル’のエントリで、本来知的創造サイクルの起点にあるものは経営者の‘意志’である、ということを書きました。考えてみると、先の好循環の起点となる顧客の‘期待’を導き出すのは、結局のところこの経営者の‘意志’なのではないか。日経ビジネスの最新号で「今こそイノベーション~ベスト30社に学ぶ危機脱出の処方箋」が特集されていますが、ランキング上位企業で紹介されている例からも、「こういう技術がありました」ではなく「こういう考えでやってきました」といことが読み取れます。経営者の強い‘意志’が顧客の‘期待’を生み、その‘期待’に応えるために‘準備’をするから、やがては‘結果’に結びつく。

 「顧客が大事」「ファンが大切」という言葉は、格好つけているわけでも何でもなく、そこに顧客やファンの声に表れる‘期待’と自らの‘意志’の結びつきを確認する(=きついところも期待があるからやってられる)という大事な意味があるからではないか。先日担当したある講演で参加者の皆様からいただいたご意見を読んでいて、これまではあまり感じなかった感覚というか、何かそれが自分に染み込んでくるような感覚を覚えながら、そんなことを考えました。

※ これは真面目な話なので日付が4月2日になったところでアップしました。