経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

時価総額と純資産の差は知財の価値か?

2007-07-09 | 新聞・雑誌記事を読む
 「赤字続きのバイオベンチャー/実を結ばぬ先行投資も」
 本日の日経金融新聞の記事です。新興市場に上場するバイオベンチャーの多くは、上場当初は高い株価をつけるものの、実績の遅れや協力金の打ち切りなどによって株価が急落する例が多くなっています。記事の表に掲載されている5社についても、アンジェスのみが高株価を維持し、それ以外は1株あたり純資産に近いレベルまで株価が低下しています。

 会計上の純資産と時価総額、知的財産の関係ということで、
 〔株価時価総額〕-〔会計上の純資産〕=〔見えざる資産(⊃知的財産)〕
つまり、投資家は知的財産を含めた見えざる資産を評価して株価に織り込んでいる、ということが、拙著、「知的財産の分析手法」(p.40)も含め、よく説明されています(、「知的財産部員のための知財ファイナンス入門」p.179~180etc.)。ところが、バイオ分野のような株価の実態を見ていると、この説明は誤りというわけではないのですが、実態にあまり則していないような気がしてきました。

 バイオベンチャーの場合、時価総額と純資産の差はまさに技術(≒知的財産)への評価という考え方は筋が通っているのですが、契約関係で何らかの悪材料が出ると株価は急落するのが通常です。その間に、技術、つまり知的財産そのものの内容が変化したわけでもないのに、突然評価が急落する。勿論、DCFで考えれば知的財産の価値が急落したということで説明がつくわけですが、実際に投資家が見ているのは知的財産がどうのこうのということではなく(実際技術そのものに何か変化があったわけではない)、期待していた収益機会が失われたということをストレートに反映しただけのことのように思います。つまり、ここでオフバランス資産が失われるということは、知的財産の価値の低下というよりも、そこに見えかけていた「現金」が消失した、ということに過ぎないのではないでしょうか。見えていた現金こそが知的財産の価値である、だから知的財産に対する評価が変化したのだ、という理屈もつくにはつくのですが、どうも理由としては後付けに過ぎないような感じがします。