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ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

宮部みゆき「ICO霧の城」

2004年09月19日 | 読書
実は宮部みゆきファンタジーは「ブレイブ・ストーリー」を以前読んで、「んー?」だったので、その理由を確認するために読んだようなものです。という訳で、最初から文句たらたらなんですが(汗)
「ブレイブ・ストーリー」を読んだ時に、あまりにもゲームっぽいのでうーむ、と思ったのですが、今回のこの作品は、プレステ2の同名ゲームに触発されて書かれたものだそうで、なるほど、宮部ファンタジーはゲームの世界なんだな、というのがよーく分かりました(汗)
ゲームの世界なんだから仕方ないと言えばそれまでなんですが、他のジャンルであれだけ社会的な作品を書いている人が、ファンタジーだけはいきなりゲームの世界になってしまうのに、どうしても違和感を感じてならないんですよね・・・
「ブレイブ・ストーリー」は、現実世界とファンタジーの世界が両方出てきたので、そのあたりの違和感がものすごかったのですが(汗)父親の浮気事件のリアリティと、ファンタジー世界のリアリティのなさがあまりにもギャップがありすぎでしたね・・・
今回の「ICO」では、ファンタジー世界しか出てこないので、その点の違和感はないかなあと思ったのですが、かえってつまらなかったです・・・(大汗)
どうしてファンタジーになると、善と悪がこんなにはっきりと描かれてしまうのでしょうかねえ。今時「絶対善」とか「絶対悪」とか、古過ぎると思うんですが・・・。他の作品で描かれているようなテーマをそのままファンタジーの世界で描いたら、面白い作品が生まれるような気がするのですがねえ・・・。
あと、子供が主人公というのがとてもズルイと思うんですよね・・・。そういうファンタジー非常に多いですが。子供なだけで=絶対善、な主人公になっちゃうじゃないですか。(そういう点が宮崎アニメ、特に「天空の城ラピュタ」で嫌いな点です・・・(汗))
子供が主人公なら皆ダメ、というわけではないですが、もちろん。ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」なんかでは子供が主人公なことに意味がありますからね・・・

どうも私はファンタジー作品に対しては評価が厳しいのかもしれませんが(汗)
私が惹かれるファンタジー作品というのは、既成の作品に対して斬新な印象があるもののようです。そういう意味では、既存のファンタジーに対してパロディ精神のあるダイアナ・ウィン=ジョーンズはちょっと面白いかも、と思いました。(ハウルシリーズしか読んでませんが(汗)映画どうなんでしょうねえ)でも、あれもかなり子供向けかなあと思いましたが。
それを考えると、トールキンの作品は、常に神話や伝説に対するオマージュとパロディ精神に溢れていて、だから新鮮に思えるのかなあと思います。小さなホビットが主人公な「ホビット」にしろ「指輪物語」にしろ、クライマックスにはどちらも衝撃を受けます。「ホビット」では、主人公が気を失っているうちに戦いが終わっちゃうとか、「指輪物語」ではあの指輪の棄てられ方だとか。
「農夫ジャイルズの冒険」も好きなのですが、あれも、勇者でもなんでもない農夫ジャイルズと年寄りのめす馬が活躍してしまう、英雄物語のパロディ精神に満ちているところが斬新でいいんですよね。
ちょっと話が逸れましたが(汗)結局のところ、面白いファンタジー作品が書かれるには、先行のファンタジー作品のことをよく知っている上で、その単なる真似ではなく、そこから新しい発想で描かれることが必要なのかもしれないなあ、と思いました。
そういう意味では、ゲームは好きかもしれないけれど、多分先行のファンタジー作品はほとんど読んでいないと思われる宮部みゆき氏のファンタジーが物足りないのは、仕方ないことなのかもしれませんね。

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5 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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オリジナルの「ICO」は... (はいろ)
2004-09-27 15:34:26
 初めまして。はいろと申します。

こちらの記事に関してかなり同感し、コメントさせていただきました。私も「ブレイブ..」が「...。」だったのですが、今回の「ICO霧の城」には「え~っ?!(怒)」とまで感じてしまいました。

 そも私は原作ゲームのICOのファンなのですが、この小説とは、180度向いてる方向が違うと感じています。原作にはそれこそ渋い児童文学のような良さがありました。

 原作ゲームは、他の既存のゲームなどのように「悪を倒す」ということが目的ではなく、「ただ少女を救いたいと思った」それだけの理由で冒険した物語が描かれています。イコは絶対善ではなく、見方によってはエゴともとれる自分の正義で行動します。女王も、彼女自身運命に囚われた悲しい人物なのでは?と想像させる演出になっています。

 原作「ICO」は、こうした二元論ではない見せ方がゲームっぽくなく、それゆえ話題になったゲームでした。なのに、宮部氏はなぜわざわざ、「勧善懲悪」ものにしてしまったのか...。理解に苦しみます。

 そういう意味で原作は、小説とは全く違う、ぐら様の仰っているような「既成に比べて斬新な」ファンタジーですよ。

 私の妹も古くからの指輪物語ファンで、かねてより「小さいホビットが指輪を担ってしまう」ところとか「最後はフロドが捨てて終わるのではない」などの要素が面白いんだ、と言っておりました。そんな妹も原作ICOを大変気にいっており、それゆえ宮部氏の小説には憤慨してました。

 PS2が必要なので本ほど気軽ではないのですが...もし機会があれば、原作の体験をオススメします。

 
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オリジナルのファンの方から見てもそうなんですか! (ぐら)
2004-09-27 22:01:45
はじめまして! コメントありがとうございます!

かなり叩いてしまったので(汗)コメントついてるの見て「反論だったらどうしよ~」と思ってしまいました(笑)

オリジナルのファンの方から見てもそうなんですね。それではやはり宮部氏のファンタジーの捉え方自体に問題あり、なのでしょうか・・・

海に迫る霧の城の描写や、生贄の設定などは新鮮な部分もあったのですが、そういうのはオリジナルから来ているものなのでしょうしね・・・宮部氏が惹かれたのはそういう面だったのでしょうか。

あの小説で一番キツかったのは、女王が徹底的に悪だったことで(汗)もしおっしゃるように女王自身にも悲しさを感じられるような話だったら、随分印象が違ったと思います。

はいろさんのblogも見させていただきましたが、ゲームのICOはなかなか面白そうですね。ファンも多いのですねー。

PS2は持っているのですが、ゲームが苦手で(ドラクエⅢしか終わったことないです・・・)時間もないのでなかなか難しいかもしれませんが(汗)機会があったら挑戦してみようかなあと思います。廉価版も出ているようですし(笑)
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長いコメントを失礼いたしました (はいろ)
2004-09-27 22:48:24
 かなり冗長でつたないコメントだったんですが、お返事いただきましてありがとうございます! 当方ブログへのお越しにも感謝します!

 廉価版1800円ですからねー! ゲームとしては破格です。機会がありましたら是非。きっとお気に入りいただけると思います。今後ともこちらへ訪問させていただきますー(^^)
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D・W・ジョーンズ (すなみ)
2004-09-28 10:36:29
そんなぐらさんにおすすめのジョーンズは

創元推理文庫から出ている

「9年目の魔法」「ダークホルムの闇の君」「わたし私が幽霊だったとき」

でしょうか(^^)。特に9年目の魔法はなんとも言い難いあじわいがあります。
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面白いファンタジー求む! (ぐら)
2004-09-28 19:48:54
はいろさん

>かなり冗長でつたないコメントだったんですが

とんでもないです! ゲームオリジナルのファンの方も同じように感じていたことがわかって、嬉しかったです。ありがとうございました!

>今後ともこちらへ訪問させていただきますー(^^)

わー、ありがとうございます(汗)ほとんど「指輪物語」のことしか書いてないですけど・・・それも最近は映画のサントラの話ばかり(大汗)



>すなみさん

D.W.ジョーンズのオススメありがとうございます! なかなか面白いファンタジー小説を嗅ぎ分けられなくて、ついつい手が出ないんですよね。

文庫で出ているとは文庫派の私にはうってつけです!(笑)

しかしその前に「イリアス」読み終わらないと(汗)5月に読み始めたのにまだ上巻です・・・
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