ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

ボロゴーヴはミムジィ

2007年10月09日 | 読書
ハワード・ショアが音楽を担当した、日本では公開してないThe Last Mimzyという映画の原作です。著者はヘンリー・カットナー。ただし、多くの作品は妻である作家のC.L.ムーアとの共作になっているそうです。
機内上映でこの映画見たのですが、あまにもファミリー向けになっていたので、本当はどんな話だったんだ? というのが気になって読んでみました。
すでに絶版になっているこの短編集、なんと地元の図書館にあったので借りてみました。えらいぞ、元田○市立図書館(笑)
読んでみて、なるほど絶版になるはずだなあと・・・いや放送禁止用語が結構出て来るんで・・・(汗)
訳し方でクリアできる話もありますが、精神疾患そのものが話の核になってる「幽霊ステーション」なんかどうしようもないですな・・・(汗)

で、とりあえずの「ボロゴーヴはミムジィ」ですが。
うーん、映画と全然違いました・・・(汗)こんなに何もかも違うとは思わなかった(汗)
未来からおもちゃが送られて来て、それを兄妹が拾って感化されて、妹の方が幼い分順応が早くて・・・というのと、ルイス・キャロルのアリスのモデルの少女もおもちゃを拾っていて、それが「鏡の国のアリス」のミムジィの詩になった、というところくらいですね、原作どおりなのは・・・
あんなに陳腐な話じゃなくて良かった、とは思いましたが、なんだかあんまり読んでいてピンとは来なかったです・・・SFあんまりわからないんで・・・(汗)
ルイス・キャロルの詩からヒントを得た、というのは面白いなあと思いますが。
ちなみにこの詩、日本語訳だとそもそも「ミムジィ」という言葉が使われてなかったりするんで、「鏡の国のアリス」を読んだことある人でもピンとは来ないかもしれませんね。
しかし、「All Mimzy were Borogoves」なのになんで「ミムジィはボロゴーヴ」じゃないんでしょうか、邦訳・・・まあ意味のない言葉なんで、どうでもいいのかな・・・

この短編集、表題作の「ボロゴーヴはミムジィ」を含めて10編の短編が収められています。せっかくなので他の短編の感想も書いてみます。
1939年代から1948年までの作品が出ているんですが、年代順に見ると、話の作り方が明らかに進歩しているのが面白いです。
と言うわけで年代順の感想を(笑)
ネタバレですが、もう手に入らない本なのでいいかな・・・(汗)

「ヘンショーの吸血鬼」
吸血鬼の館に迷い込んだ若夫婦・・・と思いきや、実はその夫婦が吸血鬼でした、という話。
ラヴクラフトに心酔していたというカットナーのゴシックホラー趣味が出ている作品、なんでしょうね。
ラストの意外なオチを狙っているのはわかりますが、途中で予想がついてしまいました。他の作品はオチの予想は裏切られるので、まだまだ初期の作品だなあ、という感じがします。
しかし、ラストのオチに対して、書き方がズルイところがあるのが減点ですねえ。オチを知って読むと、最初のあたりの夫婦二人だけのシーンの書き方が不自然です。

「第三のドア」
悪魔と取引し、第一のドア、第二のドアを開けて二つの望みをかなえ、第三のドアを開けたら悪魔に食べられていまう、という、SFというよりはまだゴシック趣味の作品ですね。
悪魔から第三のドアの色を聞きだす心理学的なやり方にはほほう、と思いました。さすが心理学の知識があるだけのことはあります。
しかし、ラストのオチ・・・「色がわからなくさせられていた」はやはりちょっとズルイような気がしました。予想はできなかったですが。後期の作品と比べるとやはりまだまだ洗練されてないですね。

「トオンキイ」
ここからC.L.ムーアとの共作だそうです。
タイムトラベルの最中に記憶を失った技術者? が、電蓄(電蓄ってのが時代を感じさせますね。最初「電蓄って何?」状態でした(汗))の形に似せて全く違う未来の機械を作ってしまう、という発想は面白いんですが、話の展開は強引かなーと思いました(汗)
機械が人間を管理して次第に洗脳し、逆らって機械を壊そうとすると消滅させられる、という展開は怖いけれど、機械=トオンキイの意図があまりにも不明なのでなんだか強引に思えてしまいましたね。

「幽霊ステーション」
北極にある巨大コンピュータが、ただ一人で管理している職員の精神状態を記録して再現してしまうため、うつ病で自殺した職員の後に赴任した職員もうつ状態になってしまい、それを助けるためにやってきた精神医学博士が、やっと事態を解決したと思ったら今度は自分が狂ってしまい・・・という話。
発想はちょっと面白いなあと思いましたが、オチが「気が狂いました」というのが安直というか・・・
そしてこの話、今はちょっと出版できないでしょうね・・・
多分、「狂気に陥る」というのはゴシックホラー趣味のオチなんじゃないかなあと・・・。それで心理学とか精神医学とかに興味があったんじゃないか、と余計な分析をしてしまいました(汗)

「未来回路」
自宅の電話が、突然未来人の電話回線と混線してしまい、未来の会話を聞いていたら、最後には自分の名前が出てきて・・・という話。
発想はかなり面白くなって来て、どうなるのか? とちょっとドキドキしましたが、これもオチが「気が狂いました」(いや「気が狂います」か)だったのがちょっと・・・(汗)

「ガラスの狂気」
このあたりから面白くなって来ます。
夢の中で、埃が積もったガラスのそばで寝ているのが現実の自分なのでは、と悩む男の話。
夢の中が実際に現実なんだろうな、というのは予想できましたが、どういう現実なのか、までは予測できませんでした。
現実の世界では、人類がほとんど滅びてしまっていると知って、夢=過去の世界に戻ることを選択するラストは予想外でしたし、読んでいてうすら寒くなるような感覚がなかなか・・・でした。

「今見ちゃいけない」
これはかなり話が練れていて面白かったです。
最初、地球は火星人に支配されている、と「頭がおかいしんじゃ?」というようなことを言っている男が言っていることが実は本当なんだろうな・・・というのは予測できたんですが、男が打ち明けている新聞記者がもしかして火星人なのでは・・・とまでは予測できましたが、男の方が火星人、というオチまでは予測できませんでした。
ここに来て、心理学とか「狂気」についての知識が上手く作品に活かされるようになって来たなあと思いました。
この作品もラストのオチにはうすら寒さが漂いますね。やっぱりちょっとホラーテイストかも。

「ハッピー・エンド」
これもかなり構成が練れていて面白かったです。これちょっと話がややこしいのであらすじ書いてられないんですが・・・
まず話の結末を書き、次に話の始まりのようでいて「物語の中間部分」な、結末に至るまでの話が書かれます。
これが「中間部分」だということで、何かウラがあるな・・・とは思うんですが、オチとなる物語の始まりの部分は、まさにウラをかかれた、という感じです。
ラストがうすら寒いのも相変わらず・・・あのロボットはこれからどうするつもりなのか・・・
この話が一番面白かったです。

「大まちがい」
現実が夢に思えて仕方ない、という男が、夢の中の世界でも同じようなことを言っていて、それぞれ精神科医に治療を受けているのですが、両方の世界で治療のために無理に眠らされた結果、二つの世界を行ったりきたりになってしまい、最後に何かが壊れた結果、なぜか精神科医が入れ替わってしまった、という話。
これも発想は面白かったですが、これ、笑う話だよな・・・? というのが迷うところ・・・
笑う話だとしたら、かなり面白いと思いました。

というわけで、時代が進むにつれて話のつくりが上手くなって、面白くなっていたのが読んでて面白かったなあと(笑)
後期の他の作品も読んでみたいなあと思いました。機会があったら・・・

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