ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

パンズ・ラビリンス(ネタバレ)

2007年10月27日 | 映画
重要なネタバレは伏字にしますが、基本的にネタバレですので、これからご覧になる方はご注意ください。

恵比寿はまだ混んでいるようだったので、私にとっては第三のシネコン(笑)板橋で見て来ました。職場からは恵比寿の方が近いけれど、自宅からだとむしろ恵比寿よりも近いかも。駅からも結構近いですしね。
レイトショーなのに、そんなに大きくないシアターではありましたが、満席までは行かなかったけれど結構入ってました。かなり人気なんですねえ、やはり。
どのあたりがそんなに人気なのか、というのも興味深々で見ました。

まずこの作品、ファンタジーを期待して行くと肩透かし、でしょうね。ファンタジーの世界は全体の割合から行っても少ししか出てこないし、映し出される世界観も、オフェリアが訪れるわずかな空間しか描かれていませんし。
デザイン的な世界観も目新しいものではなかったし。むしろ一昔前、二昔前のファンタジーの映像だなあ、というイメージでした。
アカデミー賞でメイク賞とか特殊撮影賞とか獲ったそうですが、メイクもCGもそんなにすごくはなかったな・・・と思う私はLotRで目が肥えすぎでしょうかね・・・。映像が暗かったので、そんなに粗は気になりませんでしたが。
あ、でもマンドラゴラはかわいかったです。
パンのメイクもいかにもメイク、だったし、動きの演技もいかにも、という感じでいまひとつに思えました・・・
むしろ、大尉の裂けた口のメイクがすごいなーと思いました(笑)あれで獲ったのなら納得(笑)

しかし、現実世界の映像はかなり好きでした。なんかいかにもスペイン映画な雰囲気の風景と暗い映像が。(監督がメキシコ人だから、スペイン映画ではないんですかね?)スペイン映画、たまにしか観ませんが、みるとだいたい映像が好きなんで・・・
そして、物語のウェイトも、現実世界にかなりおかれています。主人公のオフェリアが知らないところで進む話も多く、話自体は良かったのですが、主人公であるはずのオフェリアのウェイトが少なくないか? というのが気になりました。
全てはオフェリアの置かれた状況、そしてオフェリアの運命を描くために必要な背景ではあったと思いますが、もうちょっとオフェリア視点にしても良かったんじゃないかなあ、と思いました。
ビダル大尉の父親の時計のエピソードも、あれ自体はいいけれど、オフェリアを主人公とした話の中で必要だったのかどうか疑問でした。
R15指定になったのもなるほど、な、「痛い」シーンも多々あって、痛いの大嫌いな私は「聞いてないよ~」と涙ぐみそうになりながら観てましたが(汗)そういうシーンも、全てオフェリアとは関わりのないシーンだったので、必要あったのかなあと・・・まあ大尉の残酷さを描くためには必要だったのかもしれませんが、なんか監督の趣味じゃないか? という気がして、今までの作品を調べてみたら、やっぱりね、という感じでしたが・・・(汗)
大尉やメルセデス、医師、ゲリラたちのエピソードも、それ自体はいいんです。いいんだけど、そっちをメインに捉えると、逆にオフェリアのエピソードが余計に思えて、どうもバランス的に違和感を感じずにはいられませんでした。
なんて、そんな感想かいている人みかけないので、私だけが感じたことかもしれませんが。

そんな感じで見ていたので、果たしてどんな方向に話がまとまるのか、ラストを観るまで掴みきれないでいました。話自体には引き込まれたのですが。
あの結末は衝撃でしたが・・・って最初のシーンのことすっかり忘れていたのが(汗)
しかし、死を目前にしたオフェリアに王国の映像が見える場面では泣けてしまいました・・・
そして、それをみてやっと、これがどういう話だったのか、というのを理解しました。
ミュージカル版の「蜘蛛女のキス」や、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」に近いものがあるなあと。
あまりにも過酷な現実を生きるための支えに、夢の世界が必要だった、そういう話だったんですよね。
もちろん、そういう話だというのは初めから知ってはいたのですが、夢の世界によって、現実では救われなかった、という結末を見て、ようやくそれが実感として理解できました。
夢の世界は心の支えにはなるけれど、現実を救ってはくれない。そのあたりが「蜘蛛女のキス」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と同じだなあと思いました。
そしてこの映画では更に、夢を追って現実逃避することで、かえって現実では辛い思いをすることになります。母を失望させ、最後には自分の命を失ってしまうことにまでなって。
こういうところが、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」ともかなり近いなあと。なんだかこの映画のおかげで、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を前よりも理解できるようになった気さえします。
多分、こういう夢の世界=ファンタジーのシビアな捉え方が、ファンタジー好きでない大人(「ナルニア」が子供っぽいと思うような)に評価されたのではないかなあと思いました。

しかし。この話では、果たしてあれは全てオフェリアの空想が生み出したものだったのか? という疑問の余地が残されていて、そこがすごく良いなあ、と思いました。
オフェリアの母親が医師の想定を超えて回復したのは偶然なのか? 閉じ込められていた部屋からオフェリアが脱出できたのはなぜ? 迷路でオフェリアが袋小路に消えたのは?
これらのエピソードは、現実とつき合わせた説明をつけることも可能だったかもしれませんが、敢えてそういうことはせず、もしかしたらあの出来事は本当だったのかも・・・とも匂わせているのがいいなあ、と思いました。
夢の世界に出て来た鍵、ナイフなどは、現実の世界にも出てきて、現実の世界との符合を感じさせはするのですが、オフェリアは倉庫の鍵のこともメルセデスのナイフのことも知りません。オフェリアの想像を超えたもので、これもオフェリアの想像だけが生み出したものではないのでは・・・と感じさせます。
三つの試練も、オフェリアの心理状態を表しているようにも思えるのですが、必ずしもぴたりと一致しない、説明がつかないところがあります。
夢の世界が全て現実を映しているわけではない、けれどどこか符合しているところもある・・・こういう曖昧さがとてもいい、と思いました。はっきりと現実の暗喩として描かれているよりもずっと。
でも、ネット上の感想を見ると、皆あれはオフェリアの想像だったと言い切ってますね・・・私が違うのかなあ。
それでも、私はそういう解釈の余地があるところが良い、と思うので、断定はしたくないなあと思いました。
そういうところに最も惹かれたので、やはりもう少しオフェリアの視点中心だったらなあと、思ってしまうんですが。

観終わってからもずっと、ざわざわと心が波立って、ずっしりと心に残る作品でした。久々にこういう作品を見たなあ。
やはり結構地味な作品だと思うし、そんなにヒットするのが不思議な気はするのですが、確かに間違いなく名作だと思います。
最後に、音楽ですが、結構ありがちなファンタジーっぽい音楽だったのがちょっと残念でした。映像の暗さに比べてちょっとウェット過ぎたような気がします。

てなわけで今年見た映画の順位
1.パンズ・ラビリンス / 2.恋愛睡眠のすすめ / 3.ディパーテッド / 4.それでもボクはやってない / 5.パリ、ジュテーム / 6.ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 / 7.ミス・ポター / 8.300 / 9.拍手する時に去れ / 10.魔笛 / 11.ストリングス / 12.バベル / 13.マリー・アントワネット / 14.ボビー / 15.シッコ / 16.墨攻 / 17.トランスフォーマー / 18.あるスキャンダルの覚え書き / 19.ハッピーフィート 20.リトルレッド レシピ泥棒は誰だ!?
1位にするか2位にするか悩んだんですが、このずっしり感は1位かなーということで。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

指輪ミュージカルCD発売!

2007年10月27日 | 指輪物語&トールキン
いつも指輪ミュージカル情報で密かに?お世話になっている、アラゴルン役のジェローム・プラドンさんのファンの方のブログで、ロンドンの指輪ミュージカルのCDの発売がついに決定した、と教えていただきました。
ソースはこちら。スポンサーとなるIndia's Jet Airwayのサイトの記事のようです。
なんでスポンサーがインドの航空会社? A.R.Rahmanが作曲してるからとかですかねえ??
これによると、劇場では12月から販売し、一般発売は1月21日だそうです。この他、スポンサーであるIndia's Jet Airwayの機内でも1月から聴けるらしいです。
トレイラーで使われている曲はともかく、後は昨年2月にトロントで一回聴いただけなので、もうすっかり忘れていて(汗)また聴いてみたかったので嬉しいですね。日本のamazonとかでも取り扱ってくれるといいんですけど。
キャストはもちろんロンドン版ですね。ロンドン版ではガラドリエルが断然トロントより評判良いようですが、他のキャストはどうでしょうかねえ。レゴラスとギムリはトロントの人とても良かったので、どうなってるかな。
あと、今さらですが、キャストを見ていて、かなりトロント版と変わってるな、と・・・
エオウィンがいなくなってるし、セオデンもいなくて'The Steward of the Lands of Men' というキャストがありますが、どうやらセオデンとデネソールを一緒くたにしたような役柄らしいです。
まあ、トロント版ではエオウィン全く話に絡んでなくていただけだったので、カットは正解かも。どうやら2幕、3幕かなり変わっているようですね。時々見かける舞台写真でも「こんなシーン知らない」というのが結構あるし。
ロンドン版を見た方の感想もちらほら見かけるんですが、なんか割りと評判良いんですよね。トロント版よりも大分良くなっているのかもしれません。
やっぱり見てみないとなあ。来年夏には行けるでしょうか、イギリス・・・(別に行こうと思えば行けるはずなんですが。LotRシンフォニーとか他のものと重なっても指輪ミュージカルを選べば・・・(汗))

ところで、某質問掲示板の質問を見かけて知ったのですが、どこの旅行会社か知りませんが、ロンドンのツアーで、ウェストエンドのミュージカルのうち「シカゴ」「We Will Rock You」そして「ロード・オブ・ザ・リング」の3つの中から選んで一つが見られる、というのがあるらしいです。(多分自由行動のオプショナルツアーですかね)
なんかすごい取り合わせだなあ(汗)そして指輪ミュージカルを選択肢に入れるのがチャレンジャーな・・・という気がしました。他にもっと有名で無難なミュージカルあるのに。「オペラ座の怪人」とか「レミゼ」とか・・・(「オペラ座」はともかく、レミゼはチケット取れないことないでしょう)
でも逆に、ロンドンでは人気ミュージカルとして認識されつつということなのかな・・・違うかなあ。
ツアーなんで、ミュージカルのことをよく知らないばかりか、映画すら見たことのない人が突然見る場合が多いんじゃないかと・・・。そういう人がみたらどう思うんでしょうかねえ。
まあ、舞台装置は凝ってるし、照明も綺麗だし、なんとなく「わーきれい」と思って見られるでしょうかねえ。
なんて、つい余計な心配をしてしまいました(笑)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする