昨年、文庫が出ていて何気なく買ったのですが、なんと初の文庫化だったんですね。ちょっと意外。
しかし買うだけ買って放置してありまして(汗)やっと最近読みました。
この本、昔読んだことがあったつもりだったのですが、本当に読んだのか怪しいくらい、全然覚えてませんでした・・・(汗)
映画も観てたんですが、それでもかなり忘れてましたね。うーん。
昔読んだ時もいい話だと思った記憶はうっすらとあるのですが、改めて読んでみて、こんなに素晴らしい話だったかなあと。
「星の王子さま」なんかもそうですが、大人になって経験をつんでから読むとまた違った感じ方をする作品なのかもしれないなあとも思いました。
時間に追われる世知辛い世の中で生きていると、なんだか心に染みとおるように思いました。
冒頭に出てくる、子供たちの「ごっこ遊び」の場面が圧巻でした。こんな場面あったなんて覚えてなかった・・・
私も子供のころはごっこ遊びが好きな子でしたが、こんなに大勢で心を一つにして壮大な冒険物語を遊べたらすごいよなあ・・・と、なんだか感動してしまいました。
一人ひとりに重要な役が振られているのがまたいいんですよね。
そして、モモの友達の道路掃除夫ベッポの話がまた心に染みました。
真実しか話さないようにしているから、口が重いベッポ。そんなベッポが、「昔壁に光る石を二人で埋めた」なんて話をするところに、モモへの深い愛情を感じます。
長い道路の掃除をする時、「道路の先を見ていたらダメだ。今自分が掃いているところだけを一生懸命やっていればいつの間にか終わっている」なんて話していた言葉も印象的でした。
しかし、なんと言ってもいいのは、亀のカシオペイアですね。
30分先の未来が見えるという亀。この、何でもわかるわけではなく、30分だけ見えるというのがまたいいなあと思います。
歩くのがとても遅いのに、モモをさがして走り回る灰色の男たちをまいてしまう不思議さ。30分しか見えないのに、はぐれてしまったモモと見事なタイミングで再会できたり。
カシオペイアも自分で言っていましたが、彼(?)は未来を見てもその未来を変えることができるわけではなく、ただその未来に向かって導くことができるだけ、なんですよね。
そのためか、マイスター・ホラにすら「お前のやることは時々わたしにもわからないよ!」と驚かれてしまう、その不思議さ。
灰色の男たちと単身戦うモモに、「大丈夫、追いつけます」と言ったり、「あなたはそうします!」と言ったりして不思議な道を指し示すカシオペイアの存在は、モモだけでなく、読んでいる人にまで勇気を与えてくれたように思いました。
そして最後の方、時間の花と一緒に飛んでいくモモに、「とんでおかえり、モモ、とんでおかえり!」と言うカシオペイアがなんだかもう・・・
「これがモモがカシオペイアを見た最後でした」なんて書いてあるのがまたいいんですよね。
マイスター・ホラとの別れ方も良かったな・・・
最後のシーン、映画ではホラがカシオペイアに「時間はたっぷりあるのだから」と言うのですが、実はホラ役の人は映画のクランクアップを待たずに他界されていて、ホラ役が遺作になったんですよね。これを知っていてみていると思わず泣けたものでした。
また映画観たくなってしまって、DVD注文してしまいました(笑)
話がまとまりませんが(汗)とにかく、時間に追われる現代人にとってとても大切なことが書いてあるなあと、改めて実感しました。
うつ病で苦しんでいるあの娘に読んでもらいたいなあ・・・彼女が悩んでいることの答えが皆書いてあるように思いました。
でも、苦しんでいるうちはこの物語の語っている言葉が素直には心に入って行かないものなのかもしれません。
いつか彼女の心にこの物語が届くことを祈って、一応勧めてみようかな、と思います。