ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

「シルマリル新版」のトールキンの手紙

2003年05月18日 | 旧指輪日記
一昨日古本屋で購入(汗)の「シルマリル」新版、冒頭のトールキンの手紙を読みました。
この手紙目当てで買ったとも言える私でしたが、確かに買う価値あり!でした。この手紙を読むと、トールキンの世界観がとてもよくわかり、「シルマリル」本編の読み方も変わってきそうです。
特に、第一紀、第二紀と「指輪」の舞台となる第三紀のかかわり、そしてエルフたちが中つ国に残った理由、中つ国を去る理由、などがよくわかりました。本当に、以前旧版を読んだ時にもこの手紙がついていたら、もっと読みやすかったかも、なんて思ってしまいました。
また、トールキンがこの一連の物語を生み出した理由が、「イギリスのための神話を作りたかったからだ」というのは以前から知っていたのですが、改めてトールキン自身の言葉で読むと、なるほど、と思うところがありました。「指輪」での、「東夷」や「南方人」や「褐色人」の描かれ方が人種差別的ではないか、ということが気になっていたのですが、ちょっと納得しました。あくまでも「イギリスのための神話」なのですから、周辺の「異文化」がこのような形で描かれるのも、そんなにおかしいことではないかもしれないと。ただし、トールキンが「東方」や「南方」(南欧州も含めてのことのようです)の文化についてどのような評価をしていたのか、まで知らないと、なんとも言えないですが・・・
そして、トールキンが嫌っていたという「寓意」についても、興味深いことが書いてありました。「よく計算された寓意はただの物語にしか見えない。意図されない物語の方が寓意と取られるものだ」というようなことだったのですが、なるほど、と思いました。それにしても、トールキンは「指輪物語」出版以前に自分の物語が「寓意」と取られる危険性を感じていたんだなあ、ということにちょっとびっくりしました。
全体として感じたのは、一連のトールキンの世界は、神話へのオマージュから生まれたんだなあ、ということでした。「指輪」が後続のファンタジーと決定的に違うし、今読んでも新鮮なのも、多分そのせいなんじゃないか、なんてことも思いました。
それにしても、トールキン研究家の評論をいくら読んでも、トールキン自身の言葉を読むことには敵わないなあ、なんてことも感じました。「書簡集」も邦訳されればいいのになあ・・・。

コメント
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