2016年6月10日(金) 野球での二刀流 1
この所、プロ野球での二刀流が、一寸した話題である。話題の主は、プロ野球 日本ハムファイターズの、大谷翔平選手だ。
往時の剣術の世界では、剣を片手だけに持つ、一刀流が主流である。 これに対して、両の手それぞれに刀を持つ、二刀流もあり、かの剣豪、宮本武蔵がその使い手であったことは、周知の事だ。下図は、ネットから引用した宮本武蔵像である。
このように、二刀流と言えば、剣の世界での、流儀の一つだが、プロ野球の大谷選手が、投手であり、かつ野手であるという二役をこなすことから、彼のスタイルを、比喩的に、二刀流と称しているのである。
今まで、殆ど無かった、野球でのこのようなスタイルは、筆者には魅力的なのだが、果たして、今後、他の選手やチームに、広がっていくのだろうか。
今般、この話題を、2回に分けて取り上げるが、先ず、二刀流の現況についてである。
○ 野球での役割分担
チームで戦うスポーツの中、ローテーションで、全員に、ほぼ同じ役割が回ってくるものや、役割が、特定の選手に限定されているものなど、様々だ。
前者の例では バスケットボール、バレーボール、ラグビー、アメフトなどがある。
後者の例では、ゴールキーパー(GK)の役が特殊な、サッカー、アイスホッケー、ハンドボールや、投手役が要る野球、などがある。
野球での投手の役割は、他の野手に比べてかなり特殊なため、投手になるか、野手になるかは、可なり早い段階から、方向づけされるのが一般的だ。
でも、高校野球の段階では、投手と野手がかなり自由で、エースの投手が、途中で野手に廻ったり、打者としても、クリーンアップを打つことも多い。これが、プロ野球になると、投手と野手は、出場機会は別コースで、トレーニングも、別メニューになっているのが普通で、投手と野手の分業化が進んでいると言える。
稀に、途中で、投手から野手へ転向するケースもあり、著名な王貞治氏は、高校では投手だったが、巨人に入団後、野手に転向し、打者として大成し、大記録を打ち立てているのは言う迄もない。
このように、プロ野球の世界では、投手と野手の分業が行われている。投手は、投げる専門職と言えるのだが、でも、形式的に打者となる場合もあり、制度的には、投手が、打席に立つやり方と、打席に立たないやり方、が行われている。
日本のプロ野球NPBでは、
セ・リーグ 投手が打席に立つ :非DH制(本稿での便宜的呼称)
パ・リーグ 投手は打席に立たない:DH制
厳密には、投手は打ってもよいが、打たずに、代わりに打つ専門の指名打者(DH)を置くことが出来る。
DHは、Designated(指名された)Hitter(打者)の略
と、両リーグで、制度は定着していると言えるだろう。
日本が見倣った、野球の本家であるアメリカのプロ野球MLBでは、以下のようになっている。
ナショナル・リーグ :非DH制
アメリカン・リーグ :DH制
野球は、非DH制で始まったものだが、アメリカでDH制が導入されたのは、1973年からのようで、低迷していたア・リーグの人気を盛り上げるためだったようだ。 日本のNPBでは、少し遅れて、1975年から導入されている。(指名打者 - Wikipedia)
この流れで、NPBでは、現在、交流戦や日本シリーズ等では、セの主催試合は、非DH制、パの主催試合は、DH制とすると決められているが、詳細は省略する。
広島から移籍して、MLBナ・リーグのドジャースに入団した前田健太投手が、この春のデビュー戦で、非DH制のため、打席に立って、ホームランを打ったことが、かなりの話題となったことだ。(前田健太、デビュー戦で初ホームラン 米国で「祭り」状態に )
○ 投手と打者の実際
大谷翔平選手は、2012年に、花巻東高校から日本ハムファイターズに入団したが、栗山監督は、彼の、並外れた能力を見て、当初から、彼を、投手であり、打者でもある、二刀流の選手として育てると言明し、大谷本人も意欲をもって取り組んで来ているところだ。
投手が、DHとしても打席に立ち、或いは、野手として守備に就くことは、NPBのパ・リーグでは、これまで殆ど無かった事だ。
◇準二刀流
公式戦に、試合単位に、投手として、或いは、DHとして、あるいは、野手として、出場する、このやり方を、本稿では、仮に、準二刀流と呼ぶことにする。
大谷選手は、この準二刀流で、2013年から、2014、2015と活躍して来て、この2016年で、4年目となる。
昨年までの、公式戦に登場した、大まかな成績は、以下のようだ。(大谷翔平 - Wikipedia より)
登板(先発) 勝利 敗戦 勝率 防御率
投手 2013 13 3 0 4.23
2014 24 11 4 2.61
2015 22 15 5 .75 2.24
投手としては、パ・リーグで、通常の一刀流の投手に伍して、二桁勝利もし、2015年には、赤字で示すように、何と、最多勝利、最優秀防御率、最多勝率の、投手部門の三冠を獲得している。
一方、打者としては、以下のようで、打席数も少なく、いまいちの成績だが、2014年の、本塁打数10は立派である。
試合 打席 打数 安打 本塁打 打率
打者 2013 77 204 189 45 3 .238
2014 86 234 212 58 10 .274
2015 69 118 109 22 5 .202
◇ リアル二刀流
今年2016年のファイターズの開幕戦は、大谷選手が、準二刀流で投げ、打ったが、敗戦を喫し、その後も、準二刀流で出場したものの、投手としては、勝ち星には余り恵まれなかった。
通常のDH制下でも、同じ試合で、投手として、さらには、打者(DH)、野手として出場することが可能(DHの放棄)のようで、これを、マスコミでは、リアル二刀流(真二刀流)と呼んでいる。
そして、この5/29、仙台コボスタジアムでの、パ・リーグ公式戦である、
日本ハムファイターズ ーー 楽天イーグルス
戦で、NPBでは初めて、リアル二刀流が実現したのである! (まさかの「6番・投手」!『大谷翔平』の“リアル二刀流”が凄かった。 - NAVER まとめ)
この試合で大谷選手は、投手で先発し、7回まで投げ、8回以降は交代したが、打順は6番で打っている。 勿論、DHは置かれなかった。 結果は、12―3で、ファイターズが大勝し、これで、大谷投手は3勝となっている。
この試合での、大谷選手の成績は、以下のようだ。
投手 1~7回 被安打4 失点1
打者 3安打1打点 猛打賞
そして先日、6/5の、東京ドームでのセ・パ交流戦、
日本ハムファイターズ ーー 読売ジャイアンツ
で、大谷選手が、投手として先発し、5番で打席もこなすという、2度目のリアル二刀流に挑戦した。(大谷、圧巻の完投劇!これぞ“真二刀流”プロ野球新記録163キロも )
巨人がホームの試合で、セのルールの非DH制のため、元々、大谷にはDHは置かれず、打席に立っている。チームは、6-2で勝利し、大谷投手は4勝となっている。
大谷選手の成績:
投手 9回完投 6安打2失点 10奪三振
打者 1安打 1打点(犠牲フライ)
この試合で、投手として、自己の持つNPB最速記録162km/sを更新する、163km/sの剛速球を出している。
この試合は、筆者は、最初から最後まで、ワクワクしながら、TV観戦したことである。
今季2016年の大谷選手の、これまでの成績は、、
投手 :4勝4敗 防御率 2.63
打者 :打率.343 (規定打数以下) 本塁打9本 連続試合安打が17でストップ
と、打者として好調のようだ。(プロ野球 - 北海道日本ハムファイターズ - 大谷 翔平 )
大谷選手は今後、この12日の、阪神とのホームでの交流戦に、19日には、中日とのビジターでの交流戦に、それぞれ、リアル二刀流で出場予定のようで、楽しみにしたい。
次稿では、非DH制とDH制の比較、二刀流の評価尺度等に加え、スポーツで、異質の種目を複合したマルチ競技等について、触れることとしたい。