2013年4月14日(日) 電話FAXの使い勝手 1
我が家で、現用の電話FAXを入手したのは平成18年(2006年)だから、大分経過している。この電話FAXは、留守電機能も付いたタイプで、付属している2台の電話機は、どちらも、コードレスの子機になっている。
自宅の通信回線は、NTTのVDSL回線で、共存しているPC用デジタル回線と、アナログ回線が、終端装置で分離され、独立に使えるようになっている。
このアナログ回線側に電話FAXを繋いでいるが、電話とFAXを、どのように区別するかは、これまで、結構、苦労して来た、古くて新しい問題でもある。
つい先日、都心にある、某家電量販店に、FAX用のリボンを買いに行ったついでに、店員に聞いてみた。その結果、最近の機種では、電話とFAXの共用に関し、無鳴動受信(無鳴動着信とも)という、使いやすい自動識別機能が付いているのが普通になっていて、大分すっきりして来ている、ということで、やや驚いている。
元NTT―OBでもある筆者として、この辺について、2回に分けて、整理を試みたもので、本稿では、先ず、主に、無鳴動受信について触れている。
○FAXは、自分は、最近では、殆ど使う機会が無く、メール等のデータ通信に置き換わって来ている。又、社会全体としても、画像情報のやり取りは盛んになっているが、その中でのFAXの通信量は、かなり少なくなっていると思われる。
でも、高齢者や、聴覚障害者などの場合は、PC等を使えない人も多いため、今でも、FAXは、仲間同士の間などでは、必要性の高い通信手段になっているようだ。
PCや携帯のメール等を使わないワイフKにとっても同様で、電話は、勿論必須だが、FAXも、場所の地図や、一覧表、音楽の楽譜、名簿情報等、記録性の高い情報のやり取りには欠かせない、重要な通信手段として、日頃、多用されている状況だ。
現用の電話FAX
○ここで、公衆電話網を使った、電話FAXの仕組みについて、おさらいしておきたい。
通常の電話ネットの場合は、発信側からの起動で、着信側が呼び出され、応答すると、初めて回線が出来上がり、通話が行われる訳だ。この通話の所で、間借りした形で、FAX通信が行われることとなる。
このようなやりとりを図示したものを、ネットから引用させて貰った。(FAX通信の基礎知識 ~第2回 フェーズ1:“呼”の設定~)
上図にあるように、FAXの送信側から送られる、FAXであることを示すFAX識別信号(CNS信号:CalliNg Sigal 音声帯域内の1100Hzの断続音 ポーポーという音)が、回線が出来上がると、受信側まで届くようになる。
受信側で、この、CNG信号を検出できると、受信側から、FAX応答信号(CED信号:CallED signal 音声帯域内の2100Hzの連続音 ピーという音)が、送信側に送られ、送信側でそれを検出すると、その後、機能などについてのやりとり(図のフェーズ2)があり、いよいよ、FAX通信が行われる。
電話FAXの現用機や、新型機では、FAX呼と判別出来た場合は、呼び出しを行わないようになっている(無鳴動受信)など、上記のシーケンスとは、若干異なる事となるが、詳細は後述。
○FAX呼と電話呼を区別するために、予め、呼び出し回数を設定することで、少しでも、使いやすくする工夫が行われている。これに関する事項を整理して見た。
□電話FAXの現用機では、呼び出し回数の設定は、以下の様になっている。
・FAX専用として使う時 :ファクス センヨウ と設定
⇒呼び出しは行わず、即、FAXに切り替え(無鳴動受信と同じ)
・FAXが多く電話が少ない時:ファクス ユウセン と設定
⇒呼び出しは行わず、呼び出し15回分の時間(約45秒)経過後に、FAXに切り替え。 この間、発信側には呼び出し音が15回聞こ
え、電話料金もかかる。
・電話専用として使いたい時 :ムゲン と設定
⇒呼び出し音は「無限」に鳴り続ける
電話FAXとしては、ここまでは、特別な設定と言えるが、従来は、このような機能があることは知らず、使ったことも無く、以下の設定を使って来た。
・FAXの受信が少なく、電話が多い時 :1カイ~15カイ と設定
⇒設定回数だけ、呼び出し音が鳴った後、メッセージが流れて、着信したのが電話呼でも、FAXに切り替わる。
取扱説明書の記載では、上記の様になっている。 然らば、ものは試しと、実際に、呼び出し回数を上記の様に設定して、他から着信させて見ると、なんと、全く変わらず、現在の設定値(7)のままでFAXに切り替わった。回数を7→2に変更してやってみても呼び出しは7回で、結果は同じであった。 この原因は不明だが、現用機では、呼び出し回数を変更する操作が出来なくなっていることが判明した。
□一方、電話FAXの新型機では、ネットから得た情報等では、呼び出し回数の設定は、一般に、以下の様になっているようだ。
呼び出し回数:0⇒着信時の呼び出し回数を、“0”に設定すると、呼び出しはせず、FAX呼と判断できた場合は、ベルは鳴らさず、
即、FAXに切り替える。FAXの無鳴動受信を明快に表したネーミングだ。
FAX呼と判定できない時は、通常の呼び出しを行う。
呼び出し回数:n⇒着信時の呼び出し回数を、“n”に設定すると、n回呼び出しを行い、この間、FAX呼と識別出来れば、n回経過後
に、FAXに切り替える。
FAX呼と判定できない時は、そのまま、呼び出しを継続する。nは、3、6、9、12など。
○無鳴動受信
本稿の冒頭で触れたが、従来の電話FAX機では明確ではなかった、無鳴動受信機能が、最近の電話FAX機には、一般的に付いていると述べた。
この、無鳴動受信だが、FAX呼と自動的に判断した場合だけ、受信側の電話のベルは鳴らさずに、静かに(鳴動無しで)FAXが受信できるという機能である。FAX呼と判断できない、電話呼の場合は、普通に呼び出す。
現用機では、呼び出し回数を「ファクス ユウセン」、「ファクス センヨウ」と設定すれば、事実上、この、無鳴動受信が可能であることが判った。
新型機では、着信時の呼び出し回数を、“0”に設定することで実現され、この0という表現で、無鳴動受信を、明快に表している。
「ファクス ユウセン」や、呼び出し回数「0」に設定されている時、これを、端末でどのようにして実現しているのかは、詳細は不明だが、先程の図を参考にして、おおよそ、以下の様に考えている。
着信側の端末に、ネットの交換機から、呼び出し信号(16Hzの断続信号)が来て、着信呼が判る。
この、かかって来た呼が、電話かFAXかは、まだ、分らない状態のところで、呼び出しのベルの音(図の○印)は出さずに、まず端末で自動的に応答して(図の○印)、交換機が、送信側との回線を完成させるというのが、ミソの様だ。ただし、この時点で回線が出来上がることから、勿論、電話料金はここから課金される。
ここで、発信側がFAXの場合は、CNG信号が送られてくるので、受信側で、このCNG信号が検出(図の○印)された場合は、即、FAX呼と判断し、受信側からCED信号(図の○印)を返送し、FAXの通信が開始されることとなる。
このようにして、FAX呼の場合は、呼び出しが無い、無鳴動受信となる。
一方、暫時待って、送信側からのCNG信号が検出されない場合は、受信側端末では電話呼と判断して、通常にベルを鳴らして呼び出し(再呼び出しとも)を行い、応答があれば、通常の電話として、通話が開始される。
端末で自動応答してから、送信側からのCNG信号が検出されないで、電話呼と判断する迄の間、多少の時間遅れが出るが、通常の電話として使う上では、殆ど支障はないだろう。また、この短い時間内に、受信側で受話器を上げた場合も、殆ど問題ではないだろう。
以上の様に、FAXの無鳴動受信は、FAX呼の場合はベルが鳴らず、電話呼の場合は、普通にベルが鳴る。このことから、夜間就寝中や部屋が離れている場合のFAXの着信では、静かに自動受信が出来るため、煩わされないで済むこととなり、かなり有効になるだろう。
この機能は、新型機だけでなく、現用機にもあることが判ったが、両者の間で、判定時間に大きな差があるようだ。
現用機では、「ファクス ユウセン」の場合、最大呼び出し回数の15回(約 45秒)に固定された時間は、呼び出し音は出さず、その後に、FAXに切り替わる事となっているようだ。新型機の場合は、ほぼ即時で、切り替わる事となる。この違いは、何処から来るのか、やや、当惑するのだが、以下の様に考えられる。
新型機では、明示的にFAX呼であると判断出来なかった場合は、通常の呼び出しを行い、電話に応答があるまで、呼び出しを継続するようになっている。ここが重要だ。
一方、現用機では、明示的にFAX呼と判断出来ない時は、呼び出し音は出さずに、最大のタイミングを待って、FAXに切り替えるが、切り変わったら、電話としては使えなくなる。明らかに、新型機の方が、より、柔軟な仕様と言える。
○無鳴動受信(無鳴動着信とも)は、電話FAXでは、今や、当たり前の機能になっているが、以前、世に出て話題となった、NTTのファクシミリ通信網(略称 Fネット)サービスでは、この機能は、公衆電話網を使った電話FAX通信での、呼び出し問題を解決する、目玉の一つでもあった。当時、実際にどのようにして、この機能を実現したかについては、ここでは省略する。
このネットワークサービスは、現在は、iFAXに名称が変更されているようだが、この所、ネットワークのデジタル化が進展する一方、ファクシミリ通信の比重が低下した事もあり、今や、このネットサービスの存在意義は、かなり低くなっているようだ。
今回は、主に、無鳴動受信について、話題にしたが、次稿では、電話とFAXの共用に関する、その他の話題に付いて触れることとしたい。