2016年5月9日(月) 憲法に関する世論 1
今年のゴールデンウィークも、昨8日の母の日で終了し、本格的な新緑の季節である。
この3日の憲法記念日に当たっては、改憲、護憲の行事が催されるとともに、憲法に関する各社の世論調査が行われ、テレビ等で報道された。
本稿では、公表された世論調査結果について、取り上げることとしたい。
我が国の安全保障を巡っては、論議が続けられてきた後、昨年9月には、国会が大いに荒れた末に、関連法案が、強行採決されて成立した。
この状況について、当ブログの以下の記事で、筆者なりに論じている。
日本の安全保障 1~5 (2015/9/14~2015/11/20)
この関連法案が、この3月29日に施行日を迎えて有効となって、兎にも角にも、今後の国の行動を規制することとなる。
施行後は、幸か不幸か、新安保体制に関わるような事案や、事態は、まだ起っていない。
◎各社の調査結果
◇NHKの調査
憲法改正に関して、NHKが行った世論調査の結果は、この連休中に、テレビで報道された。調査結果の主な状況は、以下のようだ。この調査方法は:4.15~4/17、電話法(DDS)、18歳以上の全国男女2425人(回答率 62.8%)、とある。 (調査・研究成果|NHK放送文化研究所 を参照)
・憲法改正の要否については、
必要ある 27%
必要ない 31%
どちらともいえない 38%
となっている。
以下の図は、ネットに出ている、TV画面を写したものを引用している。(NHK世論調査。憲法改正「必要ない」が「必要ある」を上回り、9条改正「必要ない」が「必要ある」の2倍に!)
必要ある、必要ないが、ほぼ拮抗しているが、ここ数年間の変化では、必要ない、の比率が、今回が最も高かったという。
・必要ない、と答えた人にその理由を聞いた結果は、以下のようだ。
憲法9条を守りたい 70%
すでに国民に定着 11%
解釈・運用に幅を持たせればよい 10%
国際関係を損なうから 4%
・憲法9条について、改正する必要があると思うかという質問に対する回答
改正する必要があると思う 22%
改正する必要はないと思う 40%
どちらともいえない 33%
で、必要がないと思う人が過半数を越えている。
・近代憲法の基本中の基本である「立憲主義」について、「政府の権力を制限して国民の人権を保護する」という立憲主義を知っていたかどうか尋ねたところ、
知っていた 16%
ある程度知っていた 37%
あまり知らなかった 30%
まったく知らなかった 11%
という。 立憲主義について、「知っていた」人と「ある程度知っていた」人を合わせると、なんと53%で過半数になっている。 (【感涙!】NHK世論調査。「立憲主義を知っていた」が過半数!「立憲主義を重視すべきだ」が7割! )
◇毎日新聞の調査 4/16~17 電話RDS法 サンプル数1009(回答率60%)
(世論調査:憲法9条、改正反対52% 「憲法改正」は拮抗 - 毎日新聞)
・憲法9条について
改正すべきだと思う 27%
改正すべきだとは思わない 52%
・憲法を改正すべきだと思うか
思う 42%
思わない 42%
(内閣支持層では、想定通り、改正賛成が多く、内閣不支持層では、逆に、改正反対が多い。)
・夏の参院選で、改正賛成勢力が2/3以上の議席を占める事について
期待する 34%
期待しない 47%
◇東京新聞
日本世論調査会 2/27~28 面接方式 サンプル数1744人(回答率58%)
(東京新聞:9条維持、過半数 改憲2/3議席「望まぬ」が上回る 憲法世論調査:政治(TOKYO Web))
・9条改憲の必要性
必要がある 38%
必要はない 57%
・改憲に賛成の人の理由
憲法の条文や内容が時代に合わなくなっているから 61%
あらたな権利や義務などを盛り込む必要があるから 次位
・改憲で議論すべき対象(二つまで回答)
憲法9条と自衛隊 52%
知る権利・プライバシー保護 23%
・9条改憲の必要があると答えた人が重視する点
現在の自衛隊の存在を名記すべきだ 42%
・改憲に反対の人の理由
戦争放棄を掲げ平和が保たれているから 40%
改正すれば軍備拡張に繋がる恐れがあるから 28%
・夏の参院選で、改憲に賛成の議員の議席数いついて
2/3に達しない方が良い 47%
2/3以上を占めた方が良い 44%
○読売新聞の調査 (郵送方式 憲法「改正する方がよい」51%…読売調査 : 世論調査 : 読売詳報_緊急特集グループ : 調査時期は2015/2016? )
・憲法9条について
これまで通り、解釈や運用で対応する 40%
解釈や運用で対応するのは限界なので、9条を改正 35%
9条を厳密に守り解釈や運用では対応 20%
今回の調査結果について、次稿で、筆者の2、3のコメントを述べることとしたい。
かつては彼は改憲論者とし、「1億人を守る戦争で3千人が死ぬのは『コスト』のうち」といった発言も行っていました。
イラクやインド洋への自衛隊員派遣の姿を見、娘が成長するのを見て考えを改めたらしい。
いかに憲法学者といえ、市井の民同様、戦争に対す価値観へ与える材料は、メディアの映す映像、と身近で育つ娘、のようです。
このことから、憲法についての世論調査は、一部は、威勢の良さ、一部は、リアルな戦争映像、また大部は家族の将来像、に左右され得るのではないかと思った次第です。法学議論ではなく、居酒屋談義です。